研究課題/領域番号 |
21K17969
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
天田 顕徳 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (10866461)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 山岳信仰 / 観光 / 宗教 / ロッククライミング / 正当性 / ゾーニング / アクセス権 |
研究実績の概要 |
本研究は、ロッククライミングのゲレンデで起こる「アクセス問題」に注目する。アクセス問題とは、岩場へのアクセスの権利をめぐって岩の管理者や地権者とクライマーとの摩擦・対立を指す言葉である。しばしばクライマーが信仰対象や天然記念物の岩を「登攀の対象」とすることで問題が起こっている。本研究では特に信仰が関わって起こるアクセス問題を取り上げ、「岩を信仰する人々」と「岩を登る人々」双方の立場や主張を整理する。また、実際に信仰の現場でゲレンデ開発が行われた国内外の事例を精査し、両者の交渉と意見の調整過程を明らかにする。本作業を通じて宗教文化・伝統文化の保護と、持続可能なゲレンデ整備を両立するための方途や、それに資する基礎資料を提示することが本研究の目的である。 初年度となる本年度は「アクセス問題」を報じてきた山と渓谷社の雑誌「ROCK&SNOW」(前身誌である「岩と雪」1958年~1995年刊行を含む)の記事を収集・精査し、事例リストを作成した。また、地元とクライマーが良好な関係を結んでいるエリアと問題を抱えているエリアのいくつかに焦点を絞り、オンラインインタビューを織り交ぜながら関係者やクライマーへのインタビューを行った(インタビューエリアの具体的な場所については情報の性質上、現時点での公開を控える)。以上により研究全体の基盤となる基礎資料が作成された。 加えて、伝統的な山岳信仰の霊場である出羽三山の地元協議会「出羽三山門前町プロジェクト」と共同で伝統文化を毀損しないアドベンチャーツアーの可能性についても協議を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述の通り、資料調査や基礎データの作成については順調な進捗が認められるものの、新型コロナウイルス感染症の拡大が収束しきらず、現地における予備調査の遂行に困難をきたしたため。他方で、研究計画の段階では予定していなかったアドベンチャーツーリズムに関する地域協議会と協議などが行えたことは本研究の展開を考える上で、望外の大きな進捗となった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は本年度に収集・整理した基礎資料をもとに以下3つの柱を立てて研究活動を推進する。 1:本年度に実施予定であった現地調査を遂行する。調査地は本年インタビューを行ったエリアの一つで、地元商店などのステークホルダーやクライマーに予備調査を行うことができた山形県山形市・立石寺(山寺)周辺のエリアを第一候補とし、ステークホルダー間の交渉過程を確認する。なお、当初の調査予定地であった熊野での調査も感染状況を注視しながら引き続き調査の可能性を探るものとする。 2:本年度に収集したアクセス問題の事例データを口頭発表および論文の形で公開する。 3:アクセス問題を「アドベンチャーツーリズム」の文脈でも捕捉し、あらためて本研究課題の持つ学術的な意義を確認する。そのため観光学や周辺分野における関連文献を集約する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大が収束せず、予定していた現地における予備調査を行うことができなかった。他方で、基礎資料の整理に力を入れ、関連資料の購入などを行ったため当初計画との差額が発生した。 差額は今年度行うことができなかった現地調査に充てるものとする。
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