本研究は,宿泊予約サイト(OTA)データを中心に,現在未活用のWebデータの新たな活用法を示すことで,DMO等の観光振興組織によるデータオリエンテッドな誘客策の実施を支援するものである.2023年度および研究機関全体の成果は以下の通りである. 2023年度は,前年までに明らかになった課題を受けて,OTAデータ上での「予約可能プラン数」から「推定空室数」を算出するための方法を先行研究をもとに提案し,複数の手法による推定と比較を行うことで,その精度を検証した.その結果,提案手法による推定結果は,宿泊旅行統計調査における空室売数と近い増減のパターンを示し,オリンピック開催年のみの祝日など,イレギュラーな形で発生する需要を日単位で観測可能なことも示唆された.日単位や週単位の分析が可能となることで既存の統計(月単位)では行うことができない分析が可能となる.その一例として,空室数を観光需要の高い土曜日とそれ以外の曜日に分けて分析することで,地域ごとの宿泊需要の特徴把握を試みた.結果として,コロナ禍においては大都市から徐々に宿泊需要が回復している様子や,観光需要のみが急速に変化している地域を抽出することができた. 上記のように,OTAデータを用いた空室数の推定方法が徐々に確立され,日本の全地域の日単位の分析が可能となったことで,様々なイベント等の効果の検証が可能になったと言える.加えて,昨年度分析したクラウドファンディングのように,地域の取り組みが同じ形式で公表されているオンラインプラットフォームのデータを組み合わせることで,従来であれば効果の可視化が困難であったデータ不足の地域について,複数の視点から分析が可能となる.
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