研究課題/領域番号 |
21K17987
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研究機関 | 福岡女子大学 |
研究代表者 |
河原 梓水 福岡女子大学, 国際文理学部, 講師 (70726017)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 奇譚クラブ / サドマゾヒズム / SM / BDSM / 生活記録運動 / 近代化 |
研究実績の概要 |
本年度は、第一に、『奇譚クラブ』で1950年代に展開した脱病理化の議論を検討した。とりわけ「告白」と称されるポルノグラフィックな読み物に着目し、これらが同時期の誌面において、単に性的欲望を喚起するものではなく、「真実」を描いているという評価がある事実を分析した。即ち、これらの作品群は、当時一般社会で大流行した生活記録運動の理論を転用し、民主的で近代的な夫婦の性生活を描くことで、サドマゾヒズムを脱病理化するとともに、その主体を近代化を達成した自律的主体として位置づける機能を果たしたことを明らかにした。 第二に、1960年代~1980年代にかけてのSM雑誌の網羅的調査も進めた。1970年頃から史料に姿を現し始める商業SMの初期の存在形態を明らかにすることを目的として進めた。『奇譚クラブ』には商業広告はほとんど掲載されていないため、かわりに『風俗奇譚』、『S&Mスナイパー』、『SMスピリッツ』、『SMマニア』などの雑誌を中心に調査を行なうとともに、書籍として刊行された性風俗ルポで、SMに言及しているものを収集した。未だ詳細は不明な点が多いが、これまでも存在はよく知られていた大阪・唄子の店、静岡・美芸会、東京・家畜人ヤプーの館、昆などの情報をあつめ、SM実践が商業化し「プレイ」として確立していく様子を少しつかむことができた。 第三に、SMプレイが確立し、大衆化し、規範が形成される上で重要な役割を果たす法規制について調査した。風営法の歴史的展開を踏まえた上で、大規模改正の前後における一般週刊誌における言及を調査した。その結果、1985年改正で届け出が必要になったことで、SMクラブの存在形態が大きく変化することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年はコロナによる影響をそれほど受けず、東京での調査を実施することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き1970年以降の調査を進める。 これに加えて、当時を知るSM愛好者にインタビュー調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
少額の残額であり、適正に使用した結果端数が発生したもの。
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