2022年度も、日本におけるトランスフォビアの現象学的分析を進めた。具体的には、2022年4月号『思想』において論文「トランス・アイデンティティーズ、あるいは「名のなかにあるもの」について」を発表した。また、トランスフォビアを分析する上で重要な文献であるサラ・アーメッド「ハンマーの共鳴」を『現代思想』紙上において翻訳・解説し、また、未邦訳の文献ゲイル・サラモン『ラティーシャ・キングの生と死:トランスフォビアの批判的現象学』を紹介、解説する論考を『現代思想』に掲載した。また、2023年4月以降に刊行する編著において、二編の論考を提出した。以上から、当初の研究計画に沿って、順調に研究成果を輩出できている状況であると言える。トランスフォビアの問題は、現在、これまで以上に猛威を奮っており、2018年段階ではSNSを中心としたものだったが、ますます現実政治のレベルで影響を与えるものになっている。改めて、本研究の必要性が浮き彫りになっている状況と言える。 最後に、これまでの研究を一冊の単著にまとめる作業を現在進めており、かなりの部分を書き終えている段階であり、着実に研究を深化させていると言える。
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