研究課題/領域番号 |
21K17994
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
郭 磊 名古屋大学, シンクロトロン光研究センター, 助教 (10816127)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | NEA-GaAsフォトカソード / ヘテロ接合 / マルチアルカリカソード / 光電子分光 |
研究実績の概要 |
Cs-O蒸着によるNEA-GaAsフォトカソードは高い要求真空度や短寿命が課題となっている。本研究では、丈夫なマルチアルカリフォトカソードであるCsK2Sbに着目し、Cs-K-Sbとp-GaAsのヘテロ接合による新しいNEA層の生成を試みた。実験の結果、GaAsのバンドギャップに相当する1.43eV付近からQEが立ち上がり、NEAが生成できていることが確認できた。ヘテロ接合による新しいNEAを成功した。寿命においては、ビーム寿命で1/eになるまで約47時間、ダーク寿命では1週間以上、初期のQEを維持できることも確認できた。一方で低エミッタンスと偏極した電子励起が期待される赤外線領域での量子効率は低く、現在はこの原因解明を試みている。 また、表面劣化の物理的なメカニズムの解明を目指し、NEA構造を破壊しないように超高真空を保ったまま放射光施設へ輸送し、測定用チェンバーに取り付け可能な真空輸送装置の開発を行なった。様々な放射光施設にて取り扱えるような設計にし、到達真空度は10-8Pa 台を達成し、電源のない環境下でも超高真空領域・10-7Pa 台を維持できる性能を確認した。また、1 人で取扱可能な小型・軽量を達成した。実際の使用時を想定しての動作確認と真空維持性能の評価を行い、半導体フォトカソードの性能維持のために十分な能力を持っていることを確認した。他に学内のNEA活性化装置を輸送装置に対応させる改造の設計を行なった。 今後は、量子効率を向上するため、酸素を導入し、Cs-K-Sbと酸素のNEA層の作成を試みる。また、あいちシンクロトロン光センターBL7U を中心に、実際に作製したヘテロ接合によるNEA-GaAsを輸送装置を用いて輸送し、X 線光電子分光・角度分解光電子分光等によって表面構造分析を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
予定通りでCs-K-Sbとp-GaAsのヘテロ接合による新しいNEA層の生成を成功した。さらに、初期のビームとダーク寿命を確認できた。 また、表面分析用輸送装置の開発も完全できた。初期の動作確認を完了し、設計条件を満たすことも確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、量子効率を向上するため、酸素を導入し、Cs-K-Sbと酸素のNEA層の作成を試みる。その上で、この薄膜NEA層の膜厚、蒸着条件などの依存性を解明し、最適化条件を生み出す。さらに、ヘテロ接合によるNEA-GaAsの電子放出モデルの構築を試みる。また、あいちシンクロトロン光センターBL7U を中心に、実際に作製したヘテロ接合によるNEA-GaAsを輸送装置を用いて輸送し、X 線光電子分光・角度分解光電子分光等によって表面構造分析を行う予定である。寿命を延びる条件・構造を探し出す。
|