研究課題
アルカリカソード薄膜によるヘテロ結合を用いて負の電子親和力が得られる新しいNEA-GaAs構造を実現するため、薄膜によるNEA層の理解を試み、その化学結合状態の解明を挑戦した。2021年度に薄膜フォトカソードの一種であるCsK2Sbフォトカソードの機能を損なわずに輸送できる真空スーツケース(真空度:<10-7Pa)を開発した。真空状態のテスト、輸送テストを行い、サンプルのトランスファーについての改善作業を加えて実用まで導いた。2022-2023年度にこの真空スーツケースを用い、あいちシンクロトロン光センター(あいちSR)のビームラインBL7Uへカソードを輸送し、光電子分光を行った。具体的には、名古屋大学の蒸着装置を用いてグラフェン,Si,Moの基板上に一般手法とK過蒸着法の2種類の手法でCsK2Sbフォトカソードを成膜し、QEの測定を行った。サンプルを15km離れているあいちシンクロトロン光センター(あいちSR)に輸送し、ビームラインBL7Uで、カソードの表面、およびスパッタリング(Ar+)を施して内部の光電子分光(X-ray Photoelectron Spectroscopy; XPS)を行った。得られたデータから組成を定量化し、Sbに対して規格化することで、CsK2Sbフォトカソード表面および内部組成の評価を行った。一般手法とK過蒸着法の2種類の手法で成膜したCsK2SbカソードのQEはそれぞれ5.4%(グラフェン)、2.3%(Mo)と5.6%(Si)であった。カソードの組成は一般手法のものがCs2.28K2.00Sb、K過蒸着法のものはCs0.05K1.41Sbで全く異なる組成となった。異なる手法で得られた組成は違うことが分かった。また、スパッタリングに対する耐久性の差を観測された。耐久性を考慮し、K過蒸着法から得られた組成はNEA層に適正だと抜粋できた。
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Journal of Physics: Conference Series
巻: 2687 ページ: 032035~032035
10.1088/1742-6596/2687/3/032035