研究課題
本研究では、放射性同位体(RI)内用療法において高い効果が確認されているアクチニウム225などの医療用RIの電子線形加速器を用いた製造法を検討し、更に、RI内用療法への応用に向けた基礎検討を行う。本年度は、以下の事項について実施した。(1)アクチニウム225の製造に必要なラジウム226の精製手法の検討:アクチニウム225の原料となるラジウム226試料中から不純物元素を取り除くため、イオン交換樹脂等を用いた精製を行い、アクチニウム225製造用のターゲットに供した。(2)電子線形加速器によるアクチニウム225の小規模製造:イオン交換樹脂等を用いて精製した少量のラジウム226をターゲットとし、電子線形加速器により高エネルギーの制動放射線を照射することで、アクチニウム225の小規模な製造を行った。(3)照射ターゲットのラジウム226からのアクチニウム225の分離・精製手法の検討:制動放射線を照射したラジウム226ターゲットから、イオン交換樹樹脂等を用いてアクチニウム225を分離・精製した。また、精製したアクチニウム225を、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)等を用いて分析し、含まれる不純物の評価を行った。(4)RI内用療法への応用に向けた基礎検討としてのRI内包フラーレン生成法の検討:ドラッグデリバリーシステム(DDS)への応用に向け、RIを内包したフラーレンの生成を目指し、不活性ガス雰囲気下でRIやフラーレン等にレーザーを照射する装置を構築した。
2: おおむね順調に進展している
本年度計画していた研究について、以下のような順調な進展が得られた。(1)アクチニウム225の原料となるラジウム226試料中から不純物元素を取り除くため、イオン交換樹脂等を用いた精製を行い、アクチニウム225製造用のターゲットに供した。(2)イオン交換樹脂等を用いて精製した少量のラジウム226をターゲットとし、電子線形加速器により高エネルギーの制動放射線を照射することで、アクチニウム225の小規模な製造を行った。(3)制動放射線を照射したラジウム226ターゲットから、イオン交換樹樹脂等を用いてアクチニウム225を分離・精製した。また、精製したアクチニウム225を、ICP-MS等を用いて分析し、含まれる不純物の評価を行った。(4)DDSへの応用に向け、RIを内包したフラーレンの生成を目指し、不活性ガス雰囲気下でRIやフラーレン等にレーザーを照射する装置を構築した。
次年度は、アクチニウム225の製造に必要なラジウム226の精製手法や、照射ターゲットのラジウムからのアクチニウム225の分離・精製手法の更なる検討を進め、不純物の一層の低減を目指す。また、RIやフラーレン等にレーザーを照射する実験を実施し、RI内包フラーレンの生成を目指す。
感染症等の影響により購入物品の納期が遅れるなどしたため、次年度使用額が生じた。当該額は次年度における物品購入等に用いる。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
RSC Advances
巻: 11 ページ: 19666~19672
10.1039/d0ra10196f