本研究の目標は次世代リング型放射光源での極低エミッタンス達成に必要不可欠な理想的バンチ伸長を実現するため、バンチ伸長に用いられる主空洞と高調波空 洞内に発生する過渡的電圧変動を補償するシステムを確立することである。令和3-4年度にかけては補償用広帯域空洞 低電力用モデルの製作とその性能評価を行い、第19回日本加速器学会で報告した。令和4年度には広帯域空洞内に発生する不要な高次の電磁場モードを減衰させるためのRF吸収体を製作し、低電力用モデルに組み込んだ。そして高次の電磁場モードを測定するために必要なプローブアンテナの形状を電磁場シミューレーションを用いて決定し、製作を行なった。このプローブアンテナを用いて、低電力モデルにRF吸収体を組み込んだ時と取り外した時の、高次電磁場モードとプローブアンテナとの RF結合の度合いを比較し、高次の電磁場モードがRF吸収体で減衰できていることを確認した。さらにこの測定結果を電磁場シミュレーションと比較し、高次の電磁場モードが想定通り減衰できていることを明らかにした。令和3-4年度に行った補償用広帯域空洞 低電力モデルの性能評価を通して、電力申請者が世界で初めて提案した次世代リング型放射光源における過渡的電圧変動を補償するための広帯域空洞と補償システムが、実現可能であることを実証できた。令和5年度にはこれらの研究成果をIPAC23及び第20回日本加速器学会にて報告した。
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