研究課題/領域番号 |
21K18000
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
嶋岡 毅紘 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (80650241)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ダイヤモンド / 原子力電池 / ベータボルタ電池 / ダイオード / エネルギー変換効率 / 転位密度 / pn接合 |
研究実績の概要 |
ベータボルタ電池はβ線源とダイオードを組み合わせた発電デバイスである。数十年以上の長い電池寿命のため宇宙、深海等の極限環境でのリモートセンサへの給電やインプラントデバイスへの応用が期待されている。研究代表者らはこれまでにダイヤモンドpn接合ダイオードを用いて、高い電子線のエネルギー変換効率が得られることを示してきた。本研究は大面積ダイヤモンドpn接合ベータボルタ電池作製を妨げるダイオード特性劣化要因の同定やダイオードの大型化に取り組むものである。本年度は (i)大型(111)基板の作製、(ii)大型pn接合素子の試作, (iii)ダイヤモンドpn接合ベータボルタ電池の温度依存性評価の3つに取り組んだ。 (i)ではpn接合形成に好ましい(111)を主面とした大型基板作製に取り組んだ。(100)成長により作製したバルク単結晶からレーザーカット、研磨により7~8mm角相当の(111)大型単結晶ダイヤモンド基板を作製した。典型的な(111)基板のサイズは2-3mmであり、それらの数倍の面積を持つ基板作製に成功した。(ii)では高圧合成Ib型ダイヤモンド基板上にφ1mmの素子を試作し、整流比10桁のpn接合ダイオードが作製できた。本基板の転位密度は10^4-10^5cm-2であり、このオーダー以下の転位であれば、ベータボルタ電池の整流比には大きな影響を及ぼさないことが確認できた。エピやデバイスプロセス起因の欠陥が整流特性に影響を及ぼしているものと示唆された。(iii)では系外惑星探査など極限環境を想定して、室温から数Kまでのエネルギー変換効率の温度依存性を調査した。100K以下では直列抵抗の増加に起因してエネルギー変換効率が低下すること、100K以上ではSiと比較し、2倍以上のエネルギー変換効率が維持できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた素子の大型化に関し、1mm直径のダイオード試作に成功したこと、 大型化のボトルネックとなっている(111)大型基板の作製に成功したため、上記の判断とした。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は引き続き、大型素子の試作に取り組むとともに、EBIC等による電気特性の2次元マッピングによりダイオード特性の良好/不良な素子の比較画像を取得することで、ベータボルタ電池のデバイスキラー欠陥の同定を目指す。当初は、n型ダイヤモンドの少数キャリア拡散長の評価を最終年度に予定していたが、良好な電荷収集効率(>90%)が得られているため上記の課題を優先して取り組む予定である。
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