研究課題/領域番号 |
21K18007
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
工藤 真生 九州大学, 芸術工学研究院, 助教 (40738986)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ピクトグラム / 理解度 / 知的障害 / ASD / 多様性 / wayfinding / サイン / グラフィックデザイン |
研究実績の概要 |
2021年度は、ピクトグラムのわかりやすさに関する調査、分析を行い、成人知的障害者・成人ASD・一般中学生・一般成人計127名を対象に実施した。これまで、ピクトグラムの理解度調査は、標準規格を策定するISOやJISにおいて、ピクトグラムが特定の大きさで呈示され、ピクトグラムの意味を記述させる、選択する、順位をつける等の方法がとられてきた。本研究では、調査参加者がピクトグラムを使う場面、つまり経路探索(Wayfinding)場面を想起した上で、2種類のグラフィックバリエーションのうち、どちらの方に行きたいと思うか、いずれかのピクトグラムを選んでもらう強制二択課題により理解度調査を実施した。結果、比較した20種類中、11種類のピクトグラムがJISピクトグラムよりも有意に理解度が高いことが明らかとなった。特に、「感電注意」「案内」の様に、学習が必要な抽象的な記号で表現されているピクトグラムは、人の要素を加えることで、理解度が向上することがわかった。比較刺激のうち7種類は、JISピクトグラムと差がなかった。一例として、人の要素が加えられてもグラフィックが小さい、抽象度が高いJISピクトグラムに、部分的に効果線(motion line)を加えたものなどが該当した。 この結果は、理解度の高いピクトグラムをデザインするためには、グラフィック条件のみが先行してはならず、あくまでもピクトグラム全体の具体性を高めることが、理解度の向上に影響があることを示唆していると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍の影響で、人を対象とした調査が難しいことを予想していたが、教育機関、福祉機関の研究へのご理解、ご協力を賜り、想定以上に多くの人に調査に協力を頂くことができた。また、結果を分析し、ピクトグラムのグラフィック条件に関する結果も明らかになった。そのため、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は主に、①人を対象にした調査の実施、②海外でのピクトグラムの資料調査(ガイドライン,歴史資料等)の2点を進める。①人を対象にした調査の実施では、大学生を対象に、ピクトグラムの理解度調査を実施する。あわせて不安尺度検査を実施し、双方の結果について分析し、不安度とピクトグラムの理解に相関性があるか、分析を進める。またASD,知的障害,発達障害などの障害を有する人を対象にした調査も継続して実施する。②海外でのピクトグラムの資料調査(ガイドライン,歴史資料等)では、多様性を包括したサインデザインガイドラインの収集を行う。また、ピクトグラムが標準化される以前の歴史資料の収集を行い、ピクトグラムのグラフィックエレメントのデザインについて、検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度に、海外調査を予定していたが、次年度に計画を変更した。そのため、次年度使用額は、海外調査の旅費、資料収集等に使用する。
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