今年度は、公共空間で標準的に使用されているサイン上のピクトグラムについて、知的障害者やASDを有する人がどのような意味に捉えているのかを明らかにした。方法として、知的障害・ASDを有する30名に、彼らの生活に関係があるピクトグラム19項目を選定し、実環境に設置されたサイン上のJIS Z 8210案内用図記号のピクトグラムの意味内容を問う調査を実施した。結果、「案内i」「案内所?」「障害物注意」「上り段差注意」「進入禁止」「非常口」「駅事務室」の理解度が低く、知的障害者やASDを有する人の実生活の中で機能を果たしていないことが推察された。このうち、「駅事務室」は推奨度B、それ以外のピクトグラムは全て推奨度Aであり、安全性及び緊急性に関わるもの、多数のユーザーにとって重要なもの及び移動制約者へのサービスに関わるもののため、図形を変更しないで用いることが強く要請されているものであった。 これまでピクトグラム単体を対象とした理解度調査結果では、知的障害やASDを有する人にとって「非常口」は、理解しやすいピクトグラムとして評価されていた。しかし本調査結果から実空間でのサイン上では「非常口」のピクトグラムは、理解しにくいことが明らかとなった。また、理解度が低いピクトグラムの誤答内容を分類した結果、1)見たままの形を答える、2)類似対象との誤認、3)過去にピクトグラムを見た場所の記憶とピクトグラムの意味が入れ替わる、の3パターンが誤答の傾向としてみられた。3)はピクトグラム単体を対象とした理解度調査では、得られなかった誤答内容であった。サインや実環境と合わせてピクトグラムの評価をすることで、知的障害やASDを有する人がそれぞれの生活環境でピクトグラムをどのような意味にとらえているのか、より近い状態で評価できることがわかった。
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