研究課題/領域番号 |
21K18018
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
須山 巨基 安田女子大学, 心理学部, 講師 (60893229)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会心理学 / 意思決定 / 協調問題 |
研究実績の概要 |
本研究では、科学の中で生じているエコーチェンバー現象の一端を収穫と探索のジレンマ問題であるとみなし、実験ゲーム理論および、意思決定科学の知見を用いて、大規模な実験室実験を行った。具体的には科学者が置かれている状況を一種の反協調ゲーム状況と考え、制度を切り替えられるエルファロル・バー・ゲームを実施した。20人以上からなる集団を3つ作り、参加者は2つの制度を自由に行き来した。一方では自ら他者と協調するのか協調しないのかを選べる制度と、もう一方ではコンピュータによって自らの意志を委ねることができた。エルファロル・バー・ゲームでは制度に参加した3分2以上がバーに行くと満員となり0ポイント、未満であれば10ポイント、バーに行かないことを選んだ場合に5ポイント取得できた。このゲームを20試行行うと、反協調行動が進み(ここではバーに行き続ける行為、言い換えると科学にとってよろしくない行為を行う)、自ら選択する権利を放棄し、コンピュータに決定権を委ねる(ここではコンピュータに委ねることで閲覧される論文の均一化を求める行為等)行動が増えると予想した。 その結果、予想に反し参加者は自ら選ぶ制度から離脱するのではなく、むしろ自ら選ぶ制度へ参加者の人数が増加することが見られた。また、自ら選ぶ制度のなかでは、分業に近い均衡が生じ、損をし続ける参加者と得をし続ける参加者に二分化された。つまり、非協調的な社会がバーに行かない参加者によって維持され、コンピュータへの移行を阻害したことが示された。言い換えると、損をしてでも自らの行動の選択を取りたい人により、反協調ゲームが維持され、格差を生じさせてしまう可能性が示された。この結果は次年度の日本社会心理学会、および人間行動進化学会にて発表を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナによって実験室実験の予定が大幅に遅れる中、参加者を60人以上募り、各20人以上の参加者が同時にネットワーク実験に参加する状況を作ることができた。実験の分析も順調に進み、取得したデータはすべて分析済みである。一方で、満足の行くデータが取れなかったこと、および実験の遅れが学会発表や論文の執筆に影響を及ぼしたことは否めない。ただし、次年度で行う実験のプログラムは完成しており、すぐにでも研究を継続することができることも評価したい。次年度では引き続きデータを取得し、次の論文の成果へとつなげたい。
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今後の研究の推進方策 |
コロナの影響が徐々に収まってきているが、今年度のようにオフラインを通した実験室実験は未だに実施困難であると考えられる。故に従来であれば実験室を使って検討する研究もオンライン上で行う必要性が高まってきた。よって、今後はオンライン上で参加者を募り、オンライン上で実験ゲームを行うことを計画している。具体的には、今年度と同じように20人の参加者を同時に募るオンライン実験を行う。ゲーム状況も変わらず制度変更が可能ならエルファロル・バー・ゲームを用いる。しかし、前回の実験で見られた改善点を修正する。具体的には、参加者がコンピュータに自分の決定を委ねると教示すると、コンピュータをどれほど信頼しているかに依存して参加者の行動が変わってしまうと考えられる。よって、より中立的な表現に変更を加え、合計10の集団を形成して実験を行う予定です。この実験を春から夏にかけて実施する。秋口ではこのデータを分析し、日本社会心理学会および人間行動進化学会にて発表することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響により学会発表が困難になったことと、実験室実験を安全な環境で行うことが困難であったため、次年度に繰り越すこととなった。
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