研究課題/領域番号 |
21K18022
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研究機関 | 九州産業大学 |
研究代表者 |
佐藤 忠文 九州産業大学, 地域共創学部, 講師 (90878844)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 自治体広報写真 / 広報写真 / 権利処理 / 二次利用 / 行政広報 / PR / 文化資源 |
研究実績の概要 |
自治体の広報活動では多くの写真を扱う。主に広報紙制作を念頭に撮影されるそれらの写真は,視点を変えれば地域の日常を記録した文化資源である。しかしながら資源として二次利用するには課題がある。それが肖像権を中心とした写真の権利処理である。本研究では,自治体が広報活動で扱う自治体広報写真の資源化に向け,その権利処理方法の構築を目指す。 2021年度は,関連学会での情報収集や文献調査を進めながら,事前に実施した予備調査(自治体対象の質問紙調査)から明らかになった点を検証するため,自治体広報部門を対象にヒアリング調査(調査①)を実施した。さらに当初計画を超えて,福岡県内市町村が発行する自治体広報紙に掲載された写真を対象に定量調査(調査②)を実施した。 調査①では,予備調査から判明した曖昧な権利処理や不十分なメタデータ管理の状況がなぜ生じるのか,その要因を明らかにする目的で自治体広報部門を対象にヒアリング調査を実施した。予備調査をもとに抽出した4つの自治体に業務実態に関するヒアリングを行い,内容を分析した。その結果から広報紙制作を中心とした撮影・管理プロセスの差異に影響を受けていることなどが示唆され,概ね計画当初に立てた仮説が支持された。 調査②では,自治体広報紙に掲載された写真のうち人物が写る写真の割合を推定する目的で定量調査を実施した。権利処理では人物が写る写真が特に問題となる。そこで福岡県内市町村を対象に,インターネット上で公開されている自治体広報紙から写真を抽出した。それらを分類したうえで当該写真が全体に占める割合を推定した。点数が膨大であるため,分類作業には目視に機械学習を組み合わせた手法を構築して用いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では現地訪問によるヒアリングを予定していた。しかし新型コロナウイルス感染症の拡大状況を受け,途中で現地訪問から遠隔(オンライン)によるヒアリング方法に切替えた。感染状況を睨みながら調査時期の再考を続けた結果,実施が年度後半にずれ込み件数こそ計画した数に達しなかったが,調査方法を変更したことで必要なデータを収集できたと考えている。 また当初計画を超えて,人物が写る写真の割合を調査した。調査には,感染拡大状況で作業が滞るなかに生まれた隙間時間を利用した。他の研究で用いた機械学習による画像分類手法を応用することで,より正確な推定を実現できた。これにより,本研究が構築を目指す権利処理方法の適用範囲を見積もることが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
ヒアリング調査で得た知見を参考に,具体的な権利処理方法のプロトタイプを構築する。構築したプロトタイプは自治体広報活動の場面で試行を行い,その結果を受けてより適切な方法を検討する。しかし,新型コロナウイルス感染症の影響から試行が困難になる場合が考えられる。最終年度であることから,その場合は期間延長も視野に対応する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大状況を受け,現地訪問の計画から遠隔(オンライン)によるヒアリング調査に切替えた。そのため予定より旅費を使用せず,次年度使用額が生じている。 2022年度は,自治体広報写真に対する権利処理方法のプロトタイプを構築したうえで,自治体広報活動の場面で試行を行う。プロトタイプは,インターネットを介するものなど複数を構築し,比較検討する。試行作業を進めるうえで,現地でインターネットに接続できるタブレット端末等の利用を予定している。
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