研究実績の概要 |
探索蟻を用いて, 目印の認識に関する実験を行った. 1つ目は, ポール型の目印に対するラーニング・ウォーク後の, 目印模様への反応を問う実験である. 暗室内に設置されたフィールド上で, 支配的目印と餌を紐づけて学習させる. この際, 餌側の目印模様と, 背後からの模様を変化させておく. アリは周囲を移動しながら, 何度も餌場周辺を行き来し, その間に目印情報を獲得していると予想される. その後のテスト時に, 餌場とは反対側の目印をアリに提示したところ, 目印に興味を示し, 裏側に回り込む個体も確認された. 興味深いことに, どの角度からみても同一模様の目印を用いてトレーニングさせた場合には, テスト時に提示される真新しい模様への反応は示さなかった. 以上は, アリが異なる角度や方位から獲得した視覚情報を適切につなぎ合わせ, 一つの目印として認識している可能性を示唆している. この研究は, SWARM 2022にて口頭発表を行いすでにProceedingsになっている, 現在, 解析を増やし, 論文として投稿中である. 2つ目の実験として, アリの移動・運動の有無と, 目印の学習効率性に関する研究を行った. アリを固定した状態で, 餌と目印を提示した場合でも, その目印への反応は可能であることが知られている. 一方で, 1つ目の実験結果を考慮した場合, 目印への反応性に対する学習時の動きの有無の影響は排除できない. 空間認識は, 本来世界に対する, 対象の移動によって行われるものであるからだ. 現在予備実験の段階ではあるが, 今後個体数を増やしていく予定である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目印の奥行認識に関しては, すでに結果がまとまり, 論文を投稿中である. 国内・国際学会でも高い評価を得ることができた. 後続の研究として行っている, 目印への反応と移動の関係性については予備実験がスタートしている. 以上より, 順調に進展しているものと思われる.
|
今後の研究の推進方策 |
目印への反応と移動の関係に関する実験は, 予備実験を行っているので, 今後は個体数を増やしていき, 本実験を行う予定である. また, 1つ目の奥行認識に関する実験は, 論文を投稿後に, 論文内では議論できなかった, 個体の具体的な軌跡の解析を時系列解析として行っていく予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で, 国際会議・国内会議および研究会等への参加がすべてオンラインであったため, 旅費の使用が予想を下回った. また, 研究室使用に関してもコロナのために制約が多く, 実験備品の購入などを控えたため. 次年度の計画としては, 徐々に対面での発表が可能となっているため, 旅費として使用する他, 追加実験のための実験部品および論文出版関連費として使用予定である.
|