直接投与型製剤を目指した検討では、ナノ粒子の物性が免疫の活性化に与える影響を解析し、コレステロールが形成する構造体の寄与を見出した。また、生体内において免疫活性化を引き起こし得る細胞としてリンパ管内皮細胞(LEC)を同定した。これらの検討により、免疫を活性化させずに遺伝子を導入するための免疫回避型LNPを開発するうえで基礎的な知見が得られた。また、脂質の構造を検討する中で、ビタミンEを含む脂質が逆に免疫を活性化することを見出し、原虫やがんなどに対するワクチンに応用した。またこの際、LNPによる細胞性免疫の活性化には1型インターフェロンシグナルが重要であることや、In vivoにおいて樹状細胞で発現した抗原が細胞性免疫の惹起に重要であることなどをも見出した。 免疫抑制について、転写因子を導入した樹状細胞の機能を解析した。解析の実施に際し、翻訳を活性化することを見出していた低分子(デキサメタゾン、ISRIB)をmRNA-LNPsと併用したものの、トランスフェクション活性に改善は見られなかった。また、IL-10の産生を指標にデキサメタゾンの併用が与える影響を解析したが、IL-10産生は減弱を示した。この結果から、抑制性形質の付与に低分子は有用でないことが明らかとなった。次に、炎症条件下の樹状細胞に最も強い抑制性を示した転写因子を導入した。その結果、CD4陽性T細胞の増殖抑制とTregの増加が見出された。In vivoにおける転写因子の導入については、先述した免疫回避型LNPの開発が急務であることを認識し、開発を進めた。
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