研究課題
本研究では、低侵襲かつ確実な適応的除細動の原理実証を目的として、心臓標本に対する除細動の強化学習実験システムの構築を目標とする。本システムでは、深層強化学習モデルを搭載した刺激制御装置を用いて、心臓標本の心室心外膜表面に装着した複数電極信号に基づいて心臓への適応的なペーシング刺激を行い、その結果生じる細動の発生・停止にもとづく報酬によって、より効果的な刺激条件の学習が可能な実験システムを構築する。さらに、複数の高速度カメラを用いた3次元パノラマ光学マッピングの同時計測によって、学習された適応的なペーシング刺激による除細動の機序を検証する。本課題は研究実施計画として①数値シミュレーション上での適応的除細動実験、②刺激制御装置の製作、③ウサギ摘出心標本における適応的除細動実験の3項目の目標を掲げている。初年度で①および②の原理検証が完了し、本年度は、①数値シミュレーション上での適応的除細動実験の完了、および③ウサギ摘出心標本における適応的除細動実験の初期検討を目標とした。①では、組織境界形状および心筋線維走向を数値シミュレーションモデルに導入し、8極の電極による適応的除細動モデルをin silico強化学習によって訓練した結果、除細動に成功するモデルが学習された。また訓練済みモデルによる推論を、構築済みの②のシステム上の組み込み計算機で行う際の高速化に取り組み、リアルタイムな推論実行の目処を立てた。
2: おおむね順調に進展している
本課題では①数値シミュレーション上での適応的除細動実験、②刺激制御装置の製作、③ウサギ摘出心標本における適応的除細動実験の3項目の目標を掲げ、2年目度である本年度で、①において組織境界形状および心筋線維走向をシミュレーションモデルに導入し、8極の電極による除細動モデルをin silico強化学習によって訓練した結果、除細動に成功するモデルが学習された。また訓練済みモデルによる推論を、構築済みの②のシステム上の組み込み計算機で行う際の高速化に取り組み、30mec程度の遅延時間の範囲内で推論実行、フィードバック刺激実行の目処を立てた。以上により、最終年度に③ウサギ摘出心標本における適応的除細動実験を行う準備が整った。
最終年度である2023年度は、これまでにin silico学習で訓練された除細動エージェントモデル、および構築した刺激制御装置を用いて、実際のウサギ摘出心臓において除細動の催細動を行う敵対的学習の実験にチャレンジする。電極信号を入力とするAIによる適応的な除細動刺激により、低エネルギーかつ高確率な除細動の実現が可能であるかを検証する。
当初、数値シミュレータを用いた強化学習の検討にGPUワークステーションの購入を予定していたが、研究室の共通設備としてより計算能力の高いHPCサーバが導入されたため購入を見送った。2023年度の動物実験の費用として用いる予定である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
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