アガロース(A)やコラーゲン(C)を素材とした人工卵巣デバイスを作成した。マウス卵巣より器械的に卵胞単離を行い、直径や150~180マイクロメートルの初期二次卵胞を約20個デバイスへ充填しin vitro およびin vivoでの有用性の評価を行った。in vitro研究ではそれぞれの素材のデバイス上の卵胞発育を8日間観察した。評価には卵胞径、培養液中のエストラジオール(E)値を用いた。本研究においてAデバイスでの卵胞発育と比較してCデバイスでの卵胞発育は、卵胞径の増加および培養液中のE値の上昇の点で明確であった。さらに発育した卵胞から低率であるものの成熟卵子を獲得することに成功した。 また、in vivo研究において同種マウスに卵胞を充填したCデバイスを腹膜へ移植した。 移植後2週間で卵胞の生存、卵胞径の増大を確認することができた。さらに、移植から約3週間後に採取した卵胞は切片を作成しHE染色、さらにはGDF9またはBMP15を用いた免疫組織学的染色やTUNEL法を用いて、卵胞発育の証明および卵胞へのダメージの評価、およびをCD31やVEGF(血管内皮細胞増殖因子)を用いた免疫組織学的染色による血管新生の有無を確認行った。TUNEL法では人工卵巣内のアポトーシスは有意に確認できなかった。また卵胞周囲にCD31やVEGF陽性を示す細胞が散見され、血管新生の誘起を示唆する所見であった。また、移植後3週間の人工卵巣デバイスから低率であるものの成熟卵子を獲得することに成功した。今後成熟卵子の媒精や顕微授精による受精能の評価や胚発生評価を行い、人工卵巣の機能的評価を進めていく必要があると考えられる。
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