本研究の目的は、宇宙観測用の硬X線観測装置を分子イメージングへ応用し、小動物生体内からのX線ガンマ線放射を捉えるための高感度装置や解析手法の開発である。 本研究の装置は、これまで宇宙観測用に開発を進めてきた0.75mm厚のテルル化カドミウム半導体検出器よりも結晶が厚い2mmのテルル化カドミウム半導体検出器を採用するとともに、集光系の最適化によって感度の向上を図っている。結晶の厚みが増したことで検出される信号は複雑化したが、光子情報の再構成アルゴリズムを改良し、厚みに依存するエネルギー情報に補正をかけることで高いエネルギー分解能を実現することができた。また、放射エネルギーの近い核種を複数撮像する場合でも核種ごとの画像を抽出できる解析アルゴリズムの開発を行った。宇宙観測で用いられるスペクトルフィッティングの解析手法を取り入れ、エネルギースペクトルにモデル関数をフィッティングすることで個々の核種やバックグラウンドからの放射量を推定し、核種ごとの画像を抽出している。本年度は、検量線や傾斜角によるカウントの高さ依存性、検出器の一様性の検証を行った。また、小動物生体内からのX線ガンマ線を定量化する実証実験を実施した。その結果、放射率および投与量の少ない治療用核種At-211において、小動物生体内の数kBqという少ない集積量であっても定量する高感度な装置を開発することができた。これらの研究成果は国内外の学会で報告している。
|