研究課題/領域番号 |
21K18051
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
守矢 恒司 東京工業大学, 生命理工学院, 研究員 (60833556)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | I型コラーゲン / イメージング / 肝星細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、所属グループで開発された「可視化I型プロコラーゲン発現システム」を利用した3次元肝臓組織培養モデルを構築し、コラーゲン分子の視点から肝線維化発症機構を解明することを目的としている。肝臓内での持続的な炎症反応により静止期の肝星細胞が活性化することで、コラーゲンが過剰産生され、肝線維化が発症する。そこで2021年度は、コラーゲンの発現量から追跡できる、生理的発現量およびサイトカインなどの外部因子に対する応答性を有する可視化I型プロコラーゲン発現システムの開発を実施した。これまで所属グループが開発した「可視化I型プロコラーゲン発現システム」はCMV プロモーターの制御下にあり、恒常的に発現するものであった。そこで生体内と同様な遺伝子発現系を再現するため、本来のプロモーターであるヒト I 型コラーゲンα1 遺伝子プロモーター配列を探索することにした。ヒトゲノムライブラリーからPCRにより増幅して単離し、CMVプロモーターと入れ替えることで第2世代可視化I型プロコラーゲン発現ベクターを作製した。この「第2世代可視化I型プロコラーゲン発現システム」を導入した線維芽細胞では、コラーゲン産生促進作用を持つTGF-βで刺激した後、細胞内の蛍光輝度が上昇し、かつウェスタンブロッティングにより細胞内可視化I型プロコラーゲンのタンパク質発現量も増大していることが分かった。これらの結果より、構築した「第2世代可視化I型プロコラーゲン発現システム」が外部因子に対する応答性を有することを確認した。現在、肝星細胞に「第2世代可視化I型プロコラーゲン発現システム」を導入し、安定発現株の樹立を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第2世代可視化I型プロコラーゲン発現ベクターの構築が完了し、その応答性評価が完了したため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、「第2世代可視化I型プロコラーゲン発現システム」を導入した肝星細胞の安定発現株樹立を目指す肝星細胞から分泌されるコラーゲンのプロセシング状態について、生化学的手法およびライブイメージング手法を用いて解析を進める。また細胞培養系で肝線維化再現モデル構築を目指すため、まず個体で生じている現象を理解する必要がある。そこで肝線維化モデルマウスを作製し、組織学的解析や生化学的解析を通じて、I型コラーゲンのプロセシング状態を解析する。さらにマウス個体より調製した初代培養肝実質細胞と、血管内皮細胞株および「第2世代可視化I型プロコラーゲン発現システム」を導入した肝星細胞株を共培養させる3次元肝臓組織培養モデル構築に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の影響で、一部実験を制限せざるを得なかった。したがって、細胞培養にかかわる費用が当初予定より少額となった。2022年度は、肝星細胞への遺伝子導入と並行して、3次元肝臓組織培養モデルの構築に着手する予定のため、内皮細胞の購入や動物実験のためのマウス購入費および飼育管理費が必要となる。これらの理由から、次年度への繰越額と2022年度計画予算分を用いて、研究を進める予定である。
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