研究課題/領域番号 |
21K18065
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
福田 達也 和歌山県立医科大学, 薬学部, 講師 (90805160)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リポソーム / エクソソーム / ホスファチジルセリン / カルシウム融合 / 間葉系幹細胞 |
研究実績の概要 |
細胞外小胞エクソソーム(Exo)は、膜表面に提示する膜タンパク質機能により血液脳関門(Blood-brain barrier; BBB)を透過し、内包核酸等により脳保護効果など様々な活性を示すことが報告されていることから、中枢創薬の障壁BBBを能動的に突破可能なDDSを開発するための手段として注目されている。本研究では、脳梗塞部位のBBBに対する標的化リポソームと、BBB透過能を有するExo、2種の機能性ナノ粒子を物理的に融合させることで、リポソームとExoの機能を併せ持ち、脳梗塞部位BBBを選択的かつ能動的に突破可能な革新的DDSの開発を目的としている。Exoとリポソームを融合させるために、Exo脂質膜中のホスファチジルセリン(PS)に着目し、PSを構成脂質とするリポソーム同士の融合に用いられてきたカルシウム融合法を利用した。マウスメラノーマB16F1細胞の培養上清から単離したExoをPSリポソームと混合しカルシウム融合処理を行ったところ、両粒子が融合することが蛍光共鳴エネルギー移動、および密度勾配遠心分離法を利用した解析より明らかとなった。得られた融合ナノ粒子を、Exoの由来細胞であるB16F1細胞に添加したところ、PSリポソームと比較して有意に高い細胞内取り込みを示した一方で、Exoと比較した場合では同程度の取り込みを示したことから、カルシウム融合によりリポソームへExo様の機能を付与できることが示唆された。また、BBBを透過し脳梗塞に対する治療効果を示すことが報告されている間葉系幹細胞(MSC)より、超遠心法によりExoを単離する方法を確立し、MSC-ExoとPSリポソームがカルシウム融合により融合可能なことも示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の研究成果から、PSを利用したカルシウム融合によりリポソームとExoが融合できることが明らかとなり、またExo様の機能をリポソームへ移行可能であることが示唆された。加えて、脳保護薬封入リポソームを用いた脳梗塞治療に関して、粒子径を従来汎用された100 nmよりも安定かつ小さく(約60 nm)制御することで脳保護薬による治療効果が増強できることを、脳梗塞モデルラットを用いた検討から明らかとすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
カルシウム融合によるPSリポソームとExoの融合法、およびBBB透過能をもつMSC-Exoの単離法を確立することができたため、MSC-Exoを用いて融合ナノ粒子を構築し、その機能性をin vitroおよびin vivoにおける検討により明らかとしていく。また、脳保護薬封入リポソームの物性を制御することで高い脳梗塞治療効果を発揮することに成功したことから、Exoの機能性を向上可能な技術も併せて確立することで、両者を融合させた際のさらなる機能性向上を目指すべく検討を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に発注した物品が、物流遅延のために年度内に納品されなかったため(本物品の次年度納品は確定している)。
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