研究課題
山中因子の導入により患者由来細胞を人工多能性幹(iPS)細胞へex vivo改変し、それを移植することで難治性疾患を治療する再生医療は、臨床試験でも優れた効果が得られ、有望な治療戦略として注目されている。その一方で、この戦略では、経済的コストや煩雑なiPS細胞調製工程が大きな課題となっている。その克服に向けて、in vivo山中因子導入によるiPS細胞のin situ作製は魅力的な戦略であるが、安全かつ効率的な遺伝子導入方法がまだない。そこで本研究では、ゲノム挿入の危険がなく安全かつ効率的にiPS細胞を誘導できるRNAレプリコンに着目し、高分子ミセルを用いてRNAレプリコンを送達することで、生体内でiPS細胞を作製することを目的とした。具体的には、RNAに親和性の高い柔軟性ポリカチオンによるRNAレプリコンを酵素分解から保護する機能に加え、細胞質への送達のための機能性アミノ酸を搭載した高分子ミセルを開発し、その投与により生体内で標的細胞に山中因子を発現させることで、iPS細胞をin situ誘導する方法を検討した。本年度は、多機能型RNAレプリコン内包ミセルを設計し、最適化を行うことで有望なミセル設計を見出した。その結果、トリプトファンやヒスチジン、システインを導入したポリマーを用いることでGFPレプリコンをマウス胚由来線維芽細胞に効率的に導入できることを明らかにした。よって、山中因子のレプリコンを培養細胞および実験動物に導入するために必要な全ての検討が完了した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、ポリマーの合成、ミセルの調製および有望ミセル組成の決定に成功した。実際に、有望組成のミセルによりRNAレプリコンがマウス胚由来線維芽細胞に効率的に導入された。以上より、順調に進展しているものと判断される。
今後は、有望な設計を用いて山中因子のレプリコンを導入し、抗体染色後にFCMで、山中因子陽性細胞の割合を経時的に評価する。山中因子発現後、定量PCRで幹細胞マーカーの発現を確認する。続いて、調製したiPS細胞の 分化能を、FCMで外胚葉・中胚葉・内胚葉マーカーを定量することで評価する。調製した iPS細胞を免疫不全マウスに皮下投与し、切片観察で奇形種の形成の有無を確認する。安全性が確認された後、蛍光標識されたミセルを全身投与し、全身での臓器分布の評価やGFPレ プリコンを用いたタンパク質発現活性の定量を行う。さらに、山中因子のレプリコン内包ミ セル投与後の各臓器における山中因子・幹細胞マーカーの発現をELISAで定量し、切片観察 で外胚葉・中胚葉・内胚葉・奇形腫の形成を確認する。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件) 産業財産権 (6件) (うち外国 3件)
Gels
巻: 8 ページ: 74~74
10.3390/gels8020074
Endocrinology
巻: 162 ページ: -
10.1210/endocr/bqaa248
ACS Applied Bio Materials
巻: 4 ページ: 6647~6651
10.1021/acsabm.1c00383
WIREs Nanomedicine and Nanobiotechnology
巻: 13 ページ: -
10.1002/wnan.1730
Placenta
巻: 111 ページ: 1~9
10.1016/j.placenta.2021.06.002
ACS Biomaterials Science & Engineering
巻: 7 ページ: 4439~4445
10.1021/acsbiomaterials.1c00730
Science and Technology of Advanced Materials
巻: 22 ページ: 850~863
10.1080/14686996.2021.1976055