研究課題/領域番号 |
21K18074
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
曽我部 舞奈 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任研究員 (80788951)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生体映像処理 / 手術用顕微鏡 / 手術アシスト |
研究実績の概要 |
本研究課題の目標は、手術用顕微鏡で確認できる術野の取得情報のスリム化及び、多面的な情報を融合した映像情報の提供である。
眼科領域における「見えない」状況とは、強膜裏の状態や角膜上に空いた微細な穴周辺の漏出情報、毛様体付近の閉塞情報などであった。これ らの「見えない」という問題を解決するためには、複数の計測機器を用いる必要があるが、計測機器の煩雑化は情報過多による別の「見えにく さ」を生み出す原因になる。本申請研究では、豚眼球をモデルとして用い、取得したOCTの画像情報をリアルタイムで処理し、損傷状況や、穿刺した場所周辺の流体の状況、強膜のような不透明な組織の裏側に隠れた術野などの情報を、スリム化した上で実際の手術用顕微鏡映像上に投 影することを実現し、手術における「見えない」という課題を解決することを目的とする。
本年度は、眼科手術や一般手術全体において顕微鏡画像からの術野の状況の取得と、OCT情報からの組織の変形情報の解析をメインに行なった。OCTを用いて撮像を行うにあたり、問題となったのが、狭い眼球という術野の中に存在する手術器具によるアーティファクトであった。そのため、器具の位置情報自体を判定が可能にする判定システムを構築した。さらに、OCTの計測の妨げとなっている、出血情報の取得を行うとともに、今後は、眼内注射時のガイダンスに焦点を当てて、VRを用いた情報提示システムの完成を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は眼科手術を中心とした,手術一般領域に対しての情報提示に関して進めた. 具体的には、眼科手術中に使用される器具の認識や、術中画像からの深度情報推定手法の開発、手術領域の情報を不正確にする原因となる出血位置の推定に関して、新たな手法を開発し、統合的な手術環境の情報提示に関わる基盤を整えた。他にも、本年度の課題としていた、豚摘出眼球を用いた生体再現機構に関しての開発はほぼ完了し、今後は装置を用いて学習用データの取得を目指す。見えない部分を推定するためのOCTに関しては, 画像処理の問題に合わせて,測定スピードの問題があり, その情報下で緻密な手術を行うためには,複数の情報を組み合わせての状況推定が必要なことが検証の上判明した.
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今後の研究の推進方策 |
OCTのみの情報では、眼科器具の反射の問題や、生体眼球の予期せぬ動きに対応することが難しいことが判明した。この課題に対して、OCTのみではなく, 他光学系を合わせることで,撮像スピードや、撮像領域の限界といった課題を解決できると判明し、今後はOCTのみではなくより複合的な情報を取得することを目指す。また、VRに関しては様々なデバイスを検討した結果、Oculus 及びvalve indexそれぞれのデバイスを用いて、手術状況の提示環境を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初使用を計画していたVR装置が新型コロナ、及びウクライナ情勢のためのデモ機の検証が遅れ、かつ今回の研究課題では計画していた装置よりもヘッドマウント型VR装置の方が有用であるということが検証で判明したため、翌年度にあらためてVR装置及びその付属製品、それらを踏まえた研究報告を行うための予算として使用する予定である。
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