本研究は一般的な光学顕微鏡と同じ操作性で硬さを計測する機械物性顕微鏡を開発し、生物研究の場に提供することを目指している.光学顕微鏡と同じように機械物性の観察が可能になれば,形態観察に依存した観察体系に新たに硬さの視点を追加することができる. 光学式物性計測の原理はパルスレーザーを用いて培養細胞が接着している培養用シャーレに光音響波を励起し,その振幅から接着する細胞の機械物性を推定する.すなわちこの計測を実現するためには,光を使った培養細胞の加振と微小振動の計測の二つの技術が必要となる. 本研究では特に光学的な微小振動の計測について光学系の構築および安定化を図ることで,光学式機械物性計測の実現に近づくことを目的にしている.2023年度にはこれまでに構築してきた光干渉計に関する論文投稿および,固有音響インピーダンス計測の基準物質である水と塩化ナトリウム水溶液の固有音響インピーダンスを光学的な加振を組み合わせて実施した. 論文投稿に関しては二つの干渉計を使った光音響波の検出に関して論文が受理された.また,基準物質の計測により,生体組織の固有音響インピーダンスを計測するために要求される計測レンジを達成していることを確認した. これまでの成果により,光学顕微鏡の視野の中の任意の一点の固有音響インピーダンスを計測可能であるることを示した. 今後は培養細胞の二次元イメージングのために走査光学系の構築と高速なデータ収集系の構築による二次元像の計測に取り組む.
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