研究実績の概要 |
これまで、細胞診の深層学習モデルを作成する過程においては、細胞処理溶液や標本作製方法が細胞検出精度に多大な影響を与えることを報告してきた。今年度は染色方法、標本撮影倍率に関して、AI精度との関係性を検討した。また、一般的に行われている物体検出に加え、物体の領域まで抽出することが可能なインスタンスセグメンテーションによる細胞検出・分類を行い、精度の高い学習モデルの作成条件を明らかにした。本内容は、American Journal of Clinical Pathologyに投稿し、受理された(Staining, magnification, and algorithmic conditions for highly accurate cell detection and cell classification by deep learning)。さらに、上記内容を、第64回日本臨床細胞学会春期大会(2演題)、第62回日本臨床細胞学会秋期大会(1演題)で発表を行った。 ここまで明らかにした条件をもとに、臨床検体の体腔液試料へ応用を進めている。本学附属病院の倫理申請後、過去の標本を含めた患者標本を収集し、深層学習モデルを作成するための画像収集を行った。体腔液試料475症例(内訳:肺癌63例、胃癌38例、大腸癌10例、卵巣癌64例、膵臓癌51例、乳癌14例、子宮癌33例、胆嚢・胆管癌15例など)。組織型別では、腺癌358例、扁平上皮癌9例、悪性中皮腫18例を収集し、顕微鏡写真撮影を終えた。この画像を対象に、アノテーション処理を実施している。また、深層学習モデルを作成する際に用いるアルゴリズムとして、YOLOv5, YOLOv7, YOLOX, YOLOv8, Detectron等を実施するPC環境を構築し、各種条件の検証を済ませ、実行に移せる準備が整っている。
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