研究課題/領域番号 |
21K18078
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村瀬 翔 大阪大学, 医学系研究科, 招へい教員 (30762538)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パッチ型心電計 / 多チャネル / 心房細動 / 脳梗塞 |
研究実績の概要 |
申請者はH31年度科研費若手研究(19K20710)の助成下にて、多電極シートを用いた多チャネル式パッチ型心電計試作機の導出と、安静時正常心電図(約30秒間、34例の健常人を対象)における波形描出および自動解析性能の検証を行い、同試作機が既存12誘導心電計と同等の性能を有する可能性があることを実証した。本助成下ではフェーズを発展させ、臨床研究として、心房細動を有する患者での実測を行う方針とした。既存の単チャネル式パッチ型心電計(Duranta、株式会社ZAIKEN)にて、心房細動の出現を確認できた入院患者11例を対象として、2機種(試作機およびDuranta)による1時間以上の同時心電図測定を施行することができた。各機種により得られた心電図データは、研究協力者である神戸大学大学院システム情報学研究科和泉慎太郎准教授が開発した学習型自動判読アルゴリズムを用いて解析された。主要解析項目であったRR間隔では、2機種間において良好な相関(R>0.70)を得られていたのは5例(45%)にとどまっていた。良好な相関を示した5例では測定時間内の心電図波形描出が良好であったのに対し、それ以外の6例では体動ノイズや他機材との干渉による交流ノイズなどにより心電図波形描出が不安定な傾向にあった。これらのことからは、今後、試作機構成要素の中でもハードウェア面の改良および装着位置や長時間にわたる固定方法の見直しに取り組むことで心電図波形描出の安定性を向上させていく必要があるものと考えられた。上記、洗い出された課題に対して対応し、次年度も研究を継続していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R3年7月1日からR4年2月28日までの期間で、大阪大学大学院脳神経内科学の関連病院である加納総合病院脳神経内科に入院した急性期脳梗塞患者のうち、既存の単チャネル式パッチ型心電計(Duranta、株式会社ZAIKEN)にて、心房細動の出現を確認できた入院患者11例を対象として、2機種(試作機およびDuranta)による1時間以上の同時心電図測定を施行した。各機種により得られた心電図データは、研究協力者である神戸大学大学院システム情報学研究科和泉慎太郎准教授が開発した学習型自動判読アルゴリズムを用いて解析された。解析項目についてはRR間隔(高振幅波であり自動判読しやすく、Durantaシステムにおける心房細動検出に直結する要素であるため)に着目することとした。RR間隔では、2機種間において良好な相関(R>0.70)を得られていたのは5例(45%)にとどまっていた。良好な相関を示した5例では測定時間内の心電図波形描出が良好であったのに対し、それ以外の6例では心電図波形描出が不安定な傾向にあった。試作機における心電図波形描出が不安定になる要因として、①今回の装着場所である左前胸部は左上肢・大胸筋などの体動ノイズの影響を非常に受けやすい、②同時装着した2機種の距離が近くなると電気的干渉を生じる場合がある、③試作機の送信機とデータ受信端末の通信が不安定になる場合がある、などの点が考えられた。また、11例の対象患者のうち、1例ではセンサシートと送信機を接続する部分が皮膚を擦過することで水疱形成を生じていた。これらのことから、さらに大規模な臨床研究へ発展させるには、試作機のハードウェア面での大幅な改良(貼付位置、センサシートの形状、接続部のデザイン、固定方法の見直しなど)が必要と考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で使用した試作機の構成要素では、センサ部分において6電極搭載型のフレキシブル薄膜センサシートを採用していた。現在、大阪大学産業科学研究所関谷研究室では、16電極を搭載したフレキシブル薄膜センサシートの開発が進んでいる。16電極搭載型センサシートであれば、電極数の増加および電極間距離の広がりから、より多面的な生体電気信号の立体的マップ構築が可能となると推察される。そのため、次年度は、同研究室とも研究協力体制を確立し、この16電極搭載型センサシートを軸として測定システムの各構成要素のアップグレードを図る方向性とし、正常心電図・異常心電図の少数例の測定を行うことでデバイスの品質向上を進めていく方針とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID感染症による医療ひっ迫などの社会情勢の影響もあり、予定症例数よりも登録症例数が少なかったために、必要機材の経費も減少した。ただし、今年度の研究結果から、来年度の方向性を若干修正する必要があり、3誘導型のホルター心電計などを複数台購入する可能性も生じてきているため、次年度使用額分については記載通りの支払いと執行を希望するものである。
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