研究課題/領域番号 |
21K18080
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
SOUFI MAZEN 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (80823525)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 筋骨格解析 / 深層学習 / 疾患進行モデリング |
研究実績の概要 |
2021年度に、多施設のCT画像データベースにおいて、異なる患者の撮影肢位の間の空間的変動を考慮するためのデータ調和アプローチを開発した。このアプローチを大阪大学医学部附属病院(N=12, 撮影肢位バリエーションが大きい)と奈良県立医科大学(N=10, 撮影肢位が統一された)の2つのデータベースの足部に対して適用した。その結果,17個の足の骨の自動セグメンテーション精度が有意に向上した(Diceが0.01向上,平均表面誤差(ASD)が-0.254[mm]低下).本研究は、医用画像研究会(MI研2021、電子情報通信学会)で発表された。 さらに,大阪大学附属病院の50症例のCT画像に、骨盤から膝までの筋骨格系構造のラベルを手動でアノテーションしたデータベースを構築した。このデータベースを用いて、対象構造の自動セグメンテーションのための深層学習モデル(Bayesian U-Net)を学習させた。このモデルは、0.921±0.053の精度(Dice)を達成することができ、筋肉の自動解析に向けて信頼性を確認できた。 手動および自動セグメンテーションにより、CT 画像から筋領域を抽出し、疾患の進行度を解析した。特に、変形性股関節症患者において、患側と非患側で筋肉体積および筋肉量を評価した。その結果、手動で設定したラベルと自動で設定したラベル間に強い相関が見られ,自動セグメンテーションに基づいた特徴の高い信頼性を確認できた。それによって,提案した手法は,正解データ(筋肉ラベル)が付いていない大規模データベース(2000例)に適用する際に,自動解析の信頼性が確保できることを確認した.また、重症度に応じた筋肉体積と筋肉量の変化により、疾患の進行傾向が観察された。 本研究の成果は、国内学会「第31回日本コンピュータ外科学会大会」に投稿され、学術論文も投稿を準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
提案した空間正規化に基づくデータ調和アプローチは、計画通りに実施された。また,提案した疾患進行モデリング手法は、50症例のデータベースで検証され、筋肉体積および筋肉量と疾患の重症度との関係が観察された。予定通り、2021年度には,大阪大学附属病院と共同研究で大規模データベースを整理し、自動解析プラットフォームを構築した。
現在、より大規模な分析を行うために、2000症例以上のデータベースを整理している。特に、変形性股関節症のCT画像、股関節疾患の重症度(CroweとKellgren-Lawrence(KL)および筋肉の機能状態(WOMAC)分類などの臨床情報、患者情報 (性別と年齢など)を収集されている。収集された情報は、大規模なデータベースにおける疾患進行の解析に使用される。
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今後の研究の推進方策 |
大規模なデータベースに対して、疾患進行のモデリングを行う予定である。次に、3次元画像から疾病の進行傾向を包括的に表現するために、階層的な統計的形状および濃淡モデリングのアプローチを研究している。階層的統計形状モデルは、骨盤や大腿骨などの骨構造と筋肉構造との関係を考慮するものである。剛体および非剛体の画像レジストレーション手法を使用して、平均形状/濃淡モデルを作成し、同患者に対して患側と非患側の筋肉毎の変動,及び、機能的筋肉群の変動解析を行う。主成分分析などの次元圧縮法を用い、形状特徴と濃淡特徴を表現した高次元空間において、疾患の進行を表現する予定である。 現在、骨盤から膝までの領域のみが解析されている。今年度に、足首や膝関節の筋肉など、異なる部位の筋肉を考慮した階層的な解析アプローチを検討する予定である。膝、足、足首の変形性関節症患者のCT画像などを含めた大阪大学医学部附属病院と奈良県立医科大学のデータセットを解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、学会や打ち合わせがhybridで行われたため、旅費に予定していた予算を使用しなかった。 今後、この予算で計算機を1台、GPU(ディープラーニング計算に使用する装置)1-2台を追加購入し、大規模解析の進捗を加速させたいと考えている。
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