研究課題/領域番号 |
21K18085
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
柴尾 俊輔 獨協医科大学, 医学部, 講師 (50528792)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 脳腫瘍手術 / ハプティクス / 力触覚鑷子 / グリオーシス |
研究実績の概要 |
本研究は、硬さを伝達する技術であるハプティクス技術を搭載した力触覚鑷子に、人工知能技術を利用した腫瘍、グリオーシス判別機能を搭載することを目標とする。その前提条件として、力触覚鑷子によって正常脳、腫瘍の判別ができることが必要となるため、これまでの研究では、マウスの脳腫瘍モデルにおいて安定して硬さの測定ができる条件を決定し、その測定条件において正常脳と種々のマウス脳腫瘍モデルの硬さ測定を行ってきた。令和5年度は、それらの違いを再現性を持って判別できるかを検証し、その結果をまとめ論文化することを進めた。具体的には、膠芽腫(SF126-FmC、U87-FmC、U251-FmC)および悪性髄膜腫(IOMM-Lee-FmC、HKBMM-FmC)の細胞株をヌードマウスに移植し、ハプティクス技術を搭載した力触覚鑷子を用いて腫瘍および正常脳組織の硬さを測定した。その結果、膠芽腫(SF126-FmC、U87-FmC、U251-FmC)および悪性髄膜腫(IOMM-Lee-FmC、HKBMM-FmC)はそれぞれ正常脳よりも有意に硬いことが示された。この結果を論文としてまとめ現在投稿中である。 一方、グリオーシスついては、マウスグリオーシスモデルの作成を進めているが、正常脳とグリオーシスの鑑別ができるかの懸念、脳の一部しかグリオーシスしかできないため測定時に正常脳を挟んでしまうという懸念、などがありまだ測定条件の確定まで至っていない。そのため、鑷子による安定した測定法の確立を優先事項として実験を進めている。 ヒトの検体測定については、マウス実験と同様の条件で測定を進めている。測定者と手術日程を合わせるため、測定日に制限があることがわかっていたため、測定用の検体をホルマリン固定しある程度検体が集まったところでまとめて測定する方法をとった。髄膜腫、膠芽腫含め10検体の測定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は研究代表者の異動があり、また論文化に向けてのデータ収集を優先していたため、データを元にした機械学習、グリオーシス判別のためのアルゴリズムの決定の段階に到達できていない点で遅れていると考えられる。研究期間を延長したので、機械学習の段階まで行くことを令和6年度の目標とする。
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今後の研究の推進方策 |
正常脳と種々のマウス脳腫瘍モデルの硬さ測定によって得られた結果から、正常脳と腫瘍との間に硬さの違いがあることに加え、腫瘍間でも硬さに違いがあることも判明した。そのため、硬さが腫瘍の何らかの生物学的特徴を反映している可能性が考えられ、それを特定するため膠原線維を始め様々な組織染色を行うことを計画している。この生物学的特性が明らかになれば術中に硬さ測定を行う意義がさらに高くなることが期待される。硬さ測定の安定性、再現性が確認された段階でグリオーシスにおける硬さ測定条件の決定についても進め、グリオーシス判別のための機械学習、アルゴリズムの決定の段階を目標とする。 ヒト検体測定についてもさらに検体数を増やし、データ収集を行う。そのために力触覚鑷子を複製することで、複数の施設での測定を行う体制を準備している。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文化に向けてのデータ収集を優先していたため、機械学習、アルゴリズムの決定のためのデータ解析の段階に到達しておらず、そのためのソフトなどの購入費用がなかった。また、力触覚鑷子の複製、改良の段階まで到達しなかったため、その作成費用も生じなかった。生じた残高は次年度に有効活用する予定である。 具体的には、腫瘍の生物学的特徴と硬さとの関連を明らかにするために、免疫染色に使用する抗体などの試薬購入に充てる。また、免疫染色の結果を含めてさらに学会発表を行う予定であるため、その参加費、旅費に使用する。さらに、複数の施設での測定を行う体制が整えば、力触覚鑷子を複製する必要が出てくるため、その費用に充てる。
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