(1)生体適合性を有した構造色式センサ素子の開発 構造色式センサを,生体適合材料のみで実現することに向け,製作プロセスを検討した。機械構造部は,生体適合樹脂による造形が可能な光造形により実現した。構造色の発色面は,平坦度200nm以下の鏡面となるようにフィルム研磨を行った。さらに,反射膜として,金属薄膜をスパッタリング蒸着により成膜することで形成した。構造に対して,透明樹脂板を接着剤を用いて加圧接合するすることで,構造色発色に必要な1umの空気ギャップを確保し,センサを作成した。試作したセンサチップの荷重応答特性を評価した結果,1Nまでの範囲で,構造色による荷重計測が可能なことを確認した。 (2)把持状態の“良悪” 評価に向けた機械学習モデルの構築:内視鏡治療における把持状態の“良悪”は,現状医師の長期間に渡る訓練により,感覚的に身に着けられており,人が手から受け取る感覚を,センサで取得した荷重などの波形と結びつける技術が必要になる。この把持状態の“良悪”を評価する機械学習モデルを構築するための基礎検討として,触覚センサによる荷重データと,人の感じる感覚指標を結びつける回帰モデルを, CNNモデルとして実現した。モデルは,官能評価の被験者グループよりも分散が抑えられた予測を可能とした。この結果は,1次元データである触覚センサによる荷重波形に対しても,CNNモデルの適用が有効であることを示した。 (3)動作検証 胃液粘度よりも十分に大きな粘度のグリセリンをセンサに付着させた状態での圧力計測を体内動作の模擬実験として実施し,センサ自体に粘液が付着した場合においても,構造色による計測に支障がないことを実証した。
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