研究課題
令和4年度は「掻破動作の分析」というテーマで、①手関節~手指関節の角度、加速度、関節の協調運動(連動性)を計測する、②三次元動作解析装置により掻破行動様式の種類の同定と分類を行う、③表面筋電図で骨格筋の特定と各筋肉の活動性・収縮形態を把握する、という手順で行った。①対象者に上肢機能訓練で使用されている手袋状センサー(Rapaelスマートグローブ)を装着させた。本デバイスは軽量で手の形状に合わせて長さや太さを調整可能な上、手関節の運動をジャイロセンサ、各手指はひずみゲージで細かな動きも捉えることができる。皮膚にヒスタミン液を滴下し、一定強度の掻痒を起こして掻破動作を行い、関節の角度、速度や加速度などの情報から掻破行動中の手~手指関節の角度変化、指尖部の運動方向、速度、加速度の変化、各関節の連動性などの分析を行っている。②上肢(肩関節、肘関節、手関節、手指関節、指尖部)に反射マーカーを貼付し、三次元リアルタイム動作解析装置(モーションキャプチャー)(Venus3D-R)を用いて上肢の動きを撮影した。掻破行動時の関節の動きを三次元座標で捉え、個人別による動作パターンを構造的に分類中である。疾患別、部位別、掻痒感の強弱による解析には至っていない。③上肢粗大筋と手根伸筋と屈筋、および拇指外転筋に双極誘導電極を貼付し、表面筋電図計(Myosystem1400)を用いて掻破動作時の活動電位を測定した。得られた筋電図波形を波形処理ソフト(MyoResearch XP)で整流平滑化処理(root mean square、時間間隔50msec)し、最大随意的等尺性収縮(Maximum Voluntary Contraction:以下、MVC)時の筋電図波形で正規化して%MVCを求めた。筋電図波形より各筋の活動開始時期を特定し、筋収縮連動パターンの特徴を抽出する作業は現在進行中である。
2: おおむね順調に進展している
①手関節~手指関節の角度、加速度、関節の協調運動(連動性)を計測する、②三次元動作解析装置により掻破行動様式の種類の同定と分類を行う、③表面筋電図で骨格筋の特定と各筋肉の活動性・収縮形態を把握する、という手順で行っている。新型コロナウイルス感染拡大で大規模な研究に制限があり計画よりも少し遅れているが、データ収集は進行している。
ヒトの掻破動作を関節運動力学、筋電図学、三次元動作解析による多角的分析を完了させる。その後、計画書通り皮膚掻痒疾患患者での解析へと移行する。
使用した試薬量が少なくて済んだこと、新型コロナウイルス感染拡大によって器械や備品の納入が遅れたことが次年度使用額が生じた主な理由である。研究の進行度に応じて、各設備や備品の使用料、赤外線マーカーや表面筋電図の電極などの消耗品、学会や打ち合わせの旅費、論文掲載料などに充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (8件)
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