研究課題
本研究の目的は、ソアレス・ドス・レイス国立博物館(ポルトガル・ポルト市)が所蔵する南蛮屏風(以下、ポルト南蛮屏風)を主たる対象として、日本から海外に持ち出された屏風(在外日本屏風)総体を総合的・資料学的に研究する方法を確立することにある。屏風や襖は、絵画・骨・裂・古文書(下張り文書)からなるいわば「複合資料」である。本研究は、歴史学・美術史学・建築史学・民具学・文化人類学・キリスト教史学・情報学などの学知や古文書修復などの経験知を総合して、ポルト南蛮屏風の国際的・学際的な研究に取り組もうとするものである。海外に持ち出された屏風・襖の総合的研究は、文物の移動や人びとの交流に関する歴史の新たな一面を解き明かす可能性を秘めている。ポルト南蛮屏風以外にも在外日本屏風の存在は知られており、本研究の進展は、日本とポルトガルだけでなく、日本と世界の複雑な交流史・関係史に新たな光をあてる新領域の開拓に繋がるものと考えている。令和5年度は、研究実施計画の6本の柱〈1.下張り文書データベースの構築と研究、2.ポルト南蛮屏風の来歴の調査と研究、3.在外日本資料の調査、4.美術史的研究、5.民具学的研究(絵引きの作成)、6.情報学的研究〉を推進すべき時期であったが、コロナ禍の影響を受けた令和3~4年の状況を転換することができず、ソアレス・ドス・レイス国立博物館との協定を取り結ぶことができなかった。そのため、国外調査はもとより国内調査を実施することもできなかった。