研究課題/領域番号 |
21K18122
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
稲村 哲也 放送大学, 教養学部, 名誉教授 (00203208)
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研究分担者 |
山田 恒夫 放送大学, 教養学部, 教授 (70182540)
奈良 由美子 放送大学, 教養学部, 教授 (80294180)
鈴木 康弘 名古屋大学, 減災連携研究センター, 教授 (70222065)
石井 祥子 名古屋大学, 減災連携研究センター, 研究員 (30398359)
小貫 大輔 東海大学, 教養学部, 教授 (60439669)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2027-03-31
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キーワード | リモート教育 / モンゴル / 遊牧 / 山岳高所 / 先住民社会 / レジリエンス / ブータン王国 / コンテンツ制作 |
研究実績の概要 |
本研究は、現地の大学等との共同により、遊牧・山岳・先住民地域等におけるリモート教育のあり方を、運用・実践と調査研究との両面を通じて探求し、地域特性(生業、政治経済社会的状況、エスニシティ等)と社会変容に適合した「地域適合型モデル」を構想し、学術的・社会的な貢献を目的とする実践的研究である。まず、パイロット・スタディとして、モンゴル国立大学と共同して、リモート教育がもたらす効果、影響、課題などを究明することを目指している。 モンゴル現地での研究実践はコロナ禍により実現できなかったが、リモートによる現地研究者らとの連携により、一定程度の成果を得ることができた。具体的な活動の一つは、JICA草の根技術協力事業(パートナー型)「モンゴル・ホブド県における地球環境変動に伴う大規模自然災害への防災啓発プロジェクト」(代表鈴木康弘:本科研プロジェクト研究分担者)と連携した、災害レジリエンスを高めるための市民防災の啓発活動とその映像化である。ウランバートル、ホブド市(モンゴル西部)の関係者とオンライン会議を進め、ハザードマップ作成、カルタ大会を実施し、それを題材とした、コンテンツ制作の準備を進めてきた。 国内では、2020年春からコロナ災害をテーマにしたオンライン市民対話型ワークショップを開催し、遠隔による情報共有や対話の可能性を確認してきた。また、国や自治体のコロナ対策の実務に関わるなかで、感染症災害について得るべき知識やリテラシー、リスクコミュニケーションの要点、危機を乗り越えるうえでの共感や信頼の意義について検討を重ねた。この間に得られた知見は、レジリエンスの実現をめざす遠隔教育のコンテンツとシステムの構築に資する また、国際的な単位互換や質保証を実現するためのデジタルクレデンシャルエコシステムの要素技術を検討したほか、教育情報システムの国際技術標準について調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度には、コロナ禍により、現地での研究実践は実施することができなかった。しかし、それはある程度は織り込み済みであったため、全体計画にとって大きな支障とはならなかった。挑戦的・萌芽「山岳高所・遊牧地域における遠隔教育の可能性」(代表稲村哲也:2019~2021年度)等による実績を継承することで、今後の研究展開の準備作業を進めることができた。 モンゴル国立大学では、コロナ禍対応も含めて、オンライン授業へのニーズが高まり、多様な試みが行われている。しかし、そのコンテンツ制作に関するノウハウは十分ではない。そのような実情を把握した上で、バトトルガ氏(モンゴル国立大学)との間で、コンテンツ制作手順に関するマニュアルの必要性とその内容について検討した。具体的なコンテンツとしては、前欄「研究実績の概要」で述べたJICA草の根技術協力事業との連携による防災啓発を活用したコンテンツ制作である。 また、ブータンでは、ブータン王立大学と放送大学とのMoUに基づき、のオンライン科目制作の技術移転支援及び単位互換の進展を目指してインターネットでのやり取りを継続した。ブータンでもコロナ禍のため、オンライン科目の教材のためのロケが実施できなかったが、すでに試行的に合同制作した8回のオンライン科目(Rural Development)は、王立大学が学生に提供し、学生が聴講した。 さらに、ブラジルに関しても、これまでの実践(マトグロッソ連邦大学との連携によるオンライン教育の共同)に基づき、日本の大学とブラジルの大学が協力して、それぞれの大学の学生と日本に住むブラジル人コミュニティのメンバーとがオンラインの講座を通じて共に学べる仕組みを構築する可能性について検討した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度には、モンゴルにおけるパイロット・スタディとして、JICA草の根技術協力事業等と連携して撮影してきた映像コンテンツを活用し、モンゴル国立大学のスタジオにてコンテンツを制作する。試行的コンテンツは、防災・減災、感染症対策・公衆衛生をテーマとする。 さらに、モンゴル国立大学におけるリモート教育の現状を調査し、それに基づき、地方でのリモート教育のニーズ、現状、課題の調査と解析・評価を行う。候補地としては、南部ドンドゴビ県の遊牧民を対象とする。 また、ブータンにおいては、これまで実践してきたブータン王立大学との共同事業を継続し、リモート教育のニーズ、現状、課題の調査と解析・評価を行う。 2023-24年度には、パイロット・スタディの評価から多角的に分析を行い、課題および対応策を検討し、地方拠点としての博物館活用を含めたモンゴル・モデルを構築する。また、モデルの妥当性を検証しモデルを改善するとともに、ヒマラヤ地域にも応用し、事後の分析と評価を行う。 2025-26年度には、ブラジルでの先進的なシステムを参考にしながら、モンゴル・モデルをアンデス地域にも応用し、地域固有の特性や課題を抽出し、地域適合型モデルを構築する。また、地域適合型モデルを検証し、相互に比較することで汎用型(地域間比較)モデルを検討する。また、研究成果を論文にまとめ、映像プログラムも制作して発信する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度に、モンゴルに渡航してモンゴル国立大学との共同での研究実践を計画していたが、新型コロナ感染症流行により、実施が不可能となった。Zoom等により現地と意見交換などを行ったが、渡航費がかからなかった。2022年度には、モンゴル等に渡航して、2021年度に予定していた研究活動を含めて、現地調査を実施する。
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