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2021 年度 実施状況報告書

熱スパイクによって誘起される分子運動およびその生物作用の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K18148
研究機関国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構

研究代表者

鹿園 直哉  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 統括グループリーダー (10354961)

研究分担者 小林 正規  千葉工業大学, 惑星探査研究センター, 主席研究員 (70312080)
森林 健悟  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 上席研究員 (70354975)
米谷 佳晃  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 光量子科学研究部, 主幹研究員 (80399419)
研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2026-03-31
キーワード量子ビーム / 熱スパイク / 水の密度変化 / シミュレーション / DNA損傷
研究実績の概要

量子ビームによって付与されるエネルギーの大半は熱に変換され局所的な高温状態(熱スパイク)が生じる。熱スパイクは生物作用に関与しないと一般的に考えられているが、これまでの研究対象は主にタンパク質等であり、生物作用を左右する可能性についての検討は十分とはいない。本研究では、近年向上が目覚ましい各種解析技術を組み合わせ、量子ビームによって誘起される熱スパイクに由来する圧力波がDNAに作用し、生物作用を左右する可能性を明らかにすることを目指して研究を進める。
本年度は、水分子の温度上昇による密度変化を測定するための実験の検討を進めた。超音波エコー装置を用い、水槽中の水の変化を観測した。超音波強度および周波数を変化させて条件を検討することにより、鉄イオンビームが静止する付近(ブラッグピーク)に、照射時特異的に生じるエコーシグナルを観察することができた。一方、水に照射された量子ビームの軌道付近でのエネルギー付与量を明らかにするために、生じたイオンが作る電場によって二次電子が軌道付近へ捕獲されることを考慮したシミュレーションを行った。また、個々の水分子の運動を計算し、水に熱エネルギーを与えた後、平衡状態に至る過程を記述するシミュレーションコードの開発を行なった。さらには、量子ビームによって誘発される細胞内DNA損傷を原子間力顕微鏡によって調べる手法を開発し、局所的に大きなエネルギーを付与する量子ビームにおいてはDNA損傷が空間的に密集しやすくなることを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

量子ビーム照射後の水の密度変化を調べるための実験を開始し、超音波エコーシグナルを得ることができた。また、シミュレーションコードの開発を着実に進め、熱が与えられた後の水分子の挙動を調べる初期条件を得ることができた。しかしながら、コロナ禍のため、照射実験は当初の予定通りに進めることはできなかった。

今後の研究の推進方策

量子ビームを水に照射して、超音波エコーによるシグナルを観察し、より定量的なデータを集めることを目指した実験系の確立とデータの取得を行う。具体的には、(1)バックグラウンドの低減化を目的とした照射セットアップの確立(2)シグナルの観察位置と粒子線のエネルギー付与の関係の解明、を目指した実験を進める。一方で、シミュレーションにより、量子ビームによって付与されるエネルギーが熱エネルギーとなって水に瞬間的・局所的に与えられた後の個々の水分子の挙動を調べる計算を開始する。
これらの実験および計算を進めることにより、量子ビーム照射後の水の密度変化に関する理解を深める。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍で予定されていた全ての照射実験が行えたわけではなかったこと、実験を予定通り進めることが困難だったことから予定していた実験補助者の雇用を取りやめたことなどから、物品費・旅費・人件費に未使用額が生じた。未使用額は、照射実験及びDNA損傷測定実験に係る物品費・旅費として使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Formation of clustered DNA damage in?vivo upon irradiation with ionizing radiation: Visualization and analysis with atomic force microscopy2022

    • 著者名/発表者名
      Nakano Toshiaki、Akamatsu Ken、Tsuda Masataka、Tujimoto Ayane、Hirayama Ryoichi、Hiromoto Takeshi、Tamada Taro、Ide Hiroshi、Shikazono Naoya
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 119 ページ: e2119132119

    • DOI

      10.1073/pnas.2119132119

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Debye shield formed by track potential and transport of secondary electrons in heavy ion irradiation2021

    • 著者名/発表者名
      Moribayashi Kengo
    • 雑誌名

      Radiation Physics and Chemistry

      巻: 184 ページ: 109436~109436

    • DOI

      10.1016/j.radphyschem.2021.109436

    • 査読あり
  • [学会発表] 放射線照射したプラスミドDNAに生じたクラスター損傷のFRET分析―乾燥及び細胞模擬条件下での比較2021

    • 著者名/発表者名
      赤松憲、鹿園直哉
    • 学会等名
      日本影響学会第64回大会
  • [学会発表] 放射線照射した細胞に生じるDNA損傷の可視化2021

    • 著者名/発表者名
      中野敏彰、赤松憲、津田雅貴、井出博、平山亮一、廣本武史、玉田太郎、鹿園直哉
    • 学会等名
      日本影響学会第64回大会
  • [学会発表] MULTI-SCALE SIMULATIONS AIMING TO ADVACE HEAVY ION BEAM CANCER THERAPY2021

    • 著者名/発表者名
      Moribayashi, K., Matsubara, H., Yonetani, Y., Shikazono, N.
    • 学会等名
      COMDATA2021
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 重イオンビーム照射で形成する自己組織化とDNA損傷の可能性2021

    • 著者名/発表者名
      森林健悟
    • 学会等名
      量子生命科学会第3回大会
  • [学会発表] 重イオンビーム照射による散逸構造,自己組織化形成の可能性2021

    • 著者名/発表者名
      森林健悟
    • 学会等名
      日本物理学会2021年秋季大会

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公開日: 2022-12-28  

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