研究課題/領域番号 |
21K18153
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
日高 宏 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (00400010)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | イオントラップ / イオン軌道シミュレーション |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き,異性体分離機構を備えたCs+ピックアップ法による高感度非破壊表面吸着分子分析装置の開発を行った.今年度は主に,異性体分離システムの開発に取り組んだ.前年度に決定した,異性体分離システムを移動管法による分子移動度の違いによる分離法を採用するという当初案から,イオントラップ法により空間にCs+にピックアップされた異性体分子を一時的に閉じ込め,そこにレーザーを照射することで特定の分子種を破壊することで分別する(冷)イオン振動前期解離分光法に変更したことにともない,イオン軌道計算によるシミュレーションにより,最適なイオントラップの方式や形状の決定を行った. 線形イオントラップ方式において,様々な幾何形状(電極形状や電極数)の条件でシミュレーションを行ったが,イオンをトラップするときのイオン損失量とトラップ後のレーザーとの相互作用効率に最適なイオンのトラップ形状がトレードオフになる傾向がみられた.そのため,イオントラップで用いられる既存の高周波電圧印可法に固執せず,新たな印可方法も模索しながら幾何形状の最適化を行い,イオン損失量,イオントラップ形状ともに好条件となる特殊な印可方法とそれにともなう幾何形状の決定に成功した. また,本研究計画では,既存の高感度非破壊表面吸着分子分析装置を改良するということとしていたが,所属する研究室ですでに所持している機材の提供を受け,新規に装置製作を行うこととしたため,当初は必要としていなかったイオン入射系のシステム(Cs+イオン源チェンバー,ウィーンフィルター等)や四重極質量分析器がマウントされる質量分析用チェンバーの設計製作もあわせて行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
最適なイオントラップのシステムをシミュレーションにより決定するのに多少時間がかかった.これは,極微量のイオンシグナルも無駄にできない本研究課題ではこだわるべきところであったため,やむを得ないことだったと考えている.さらに,上述したがように,当初計画には製作する予定のなかった部分の設計・製作を行ったことも,予定に遅れが出た原因であると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
シミュレーション結果をもとに,イオントラップの制作を行う.トラップの捕集効率やトラップイオンの検出限界値のなど,イオントラップのオペレーション条件を変えて特性を調べたのち,現有のレーザーを用いて相互作用実験を行い,(冷)イオン振動前期解離分光法による異性体分離実験を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度中に効率的なイオン捕集が可能なイオントラップが完成し,現有のレーザーシステムで異性体分離が可能であることを確認した後に,本装置専用のレーザーシステムを購入することを計画していた.しかし,本年度はイオントラップの最適な形状や高周波電圧印可方法などのイオントラップシステムの決定までで,設計・製作にいたらなかった.そのため,レーザーシステムの購入を行うことができず,大きな金額が持ち越しとなった.しかし,この金額はレーザー購入に使用するためのものであり,単に使用時期かずれ込んだだけであり,予算の使用計画については変更はない.
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