研究課題/領域番号 |
21K18157
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
梶原 優介 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (60512332)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 残留応力 / 高分子配向 / テラヘルツ波 / 偏光計測 / 差周波 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,プラスチック成形品の内部残留応力を三次元的に定量評価できる精密計測技術を確立することである.基盤となる物理現象は,樹脂内ポリマーの振動がテラヘルツ(THz)帯域にある点である.THz差周波光源,THz集光・偏光光学系を設計してTHz偏光計測装置を構築し,プラスチック成形品のTHz偏光依存性から内部残留応力の大きさ,向きをサブミリ空間分解能かつ非侵襲で定量評価可能な計測技術を実現・確立する. 提案法の実現のために,2021年度は周波数スイープが可能な光源,偏光制御およびサブミリ集光が可能な光学系を設計・発注した.光源と分光が一つのシステムとなったTHz-TDSはひとつの選択肢ではあるが,装置が高価かつ大型で,試料サイズも限られてしまうため,ピコ秒レーザの差周波を利用した波長可変THz光源を設計した.具体的には,非線形素子に対して周波数が数THz異なったレーザを入射させて差分のTHz出力を発振し,そのビート信号を単一走行キャリアフォトダイオード(UTC-PD)でミキシングすることにより,高速かつ安定した差周波出力を得る設計とした.加えて,光源に適切なTHz偏光光学系を設計した.試料の前後に偏光子を入れ,クロスニコル配置にすることによって偏光依存性に対する感度を高める設計とした.また透過・反射の何れの測定にも対応可能とし,またCW光源に付き物である干渉の影響を排除するため,各偏光子は少し傾斜させて配置する設計としている. 来年度は設計・発注した光源・光学系を構築してシステムを完成させ,基礎実験を進めていく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は計画通り光源・光学系の設計を完了して必要部品をすべて発注した.光学系に関しては2022年3月に届き,すでに構築済みである.光源が6月ころ届く予定であるため,届き次第システムを完成させて基礎実験に進む予定である.
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今後の研究の推進方策 |
光学系に関しては2022年3月に届き,すでに構築済みである.光源が6月ころ届く予定であるため,届き次第システムを完成させて基礎実験に進む予定である.具体的には,残留応力を持たないエンプラ(PBT,PPSなど)成形試料を準備し,試料を引張治具にて伸縮させながらで構築した装置で偏光依存性を測定し,応力と偏光依存性の関係を定量的に分析する.加えて,FEM解析と併せて応力と偏光の関係が生じるメカニズムを解明し,両者の関係を明瞭に定式化する.また,焼成または射出成形プロセスの各条件を適切に制御し,残留応力を精密に制御可能な試料作製技術を確立する.その後,構築装置で偏光依存性を分析し,残留応力の向き,大きさと偏光依存性の関係を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
テラヘルツ波の発生・検出システムが9,680,000円であるが,購入するためには2021年度の助成金では足りないため,2022年度の助成金と併せて購入する.
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