研究課題/領域番号 |
21K18161
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
嘉副 裕 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (20600919)
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研究分担者 |
吉崎 歩 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (40530415)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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キーワード | ナノ流体工学 / ナノ流路 / 液滴 / 1分子 |
研究実績の概要 |
ナノ空間の流体工学の進展により、化学分析の可算個分子レベルへの超微量化が実現しつつある。しかし、試料分子数が限定されても、空間の微小化の単なる延長では流体工学の極限である分子1個の輸送・化学処理とこれにより初めて実現する1分子分析には到達できない。本研究では、独自技術によりナノ流路で極小液滴を生成して、統計力学の原理により液滴中に試料分子1個を閉じ込め個数の単位で配列・輸送、更に液滴の合一により1分子を衝突・反応させる方法論とこれを用いた分析法を創成し、病変部の表皮角化細胞、涙液、汗などに含まれるサイトカイン分析に応用することを目的とする。研究項目A)液滴連続生成・輸送・合一のためのナノ流体デバイスの開発、研究項目B)液滴を利用した1分子配列、輸送、反応操作の検証、研究項目C)1分子分析の検証に取り組む。 2021年度は研究項目A、Bに取り組んだ。幅2000 nm、深さ900 nmのT字型ナノ流路を設計してトップダウンガラス加工により作製し、表面をトリメチルシランにより疎水修飾した。四ホウ酸ナトリウム水溶液をナノ流路に流し、フッ素オイルで切り取ることで液滴を生成した。液滴生成の圧力条件を見出し、体積5fL、頻度280Hzの液滴生成を検証した。この液滴を1粒子輸送に応用し、40 nmの蛍光ナノ粒子1個を液滴に閉じ込めて輸送することに成功した。これにより、本研究で最も基本的な操作であるナノ流路での液滴連続生成と液滴を用いた1粒子輸送を検証した。今後更なる液滴の微小化に取り組み、液滴合一操作と化学反応に展開する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初研究計画では、4年間の研究期間のうち、前半は研究項目A、B、後半は研究項目B、Cにそれぞれ注力する予定であった。1年目である2021年度は、研究項目Aでは最も基本的な流体操作であるナノ流路での液滴連続生成に成功し、研究項目Bでは統計力学にもとづく液滴への1粒子閉じ込め・輸送に成功した。よって、当初計画の通り研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の成果にもとづき、液滴の更なる微小化と流体制御の精度向上を図り、基本的な流体制御システムを完成させ、これを展開して液滴合一操作の検証に取り組む。一方、1分子を検出可能な検出システムを構築して、1分子化学反応の検証を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、ナノ流路で1分子を検出するための1分子蛍光検出システムに必要な検出器等の備品を2021年度に購入する予定であった。しかし、ナノ流路内で生成され輸送される液滴内の分子検出という特殊な条件であることから、ナノ流路内での液滴生成と1粒子輸送を実現した後の2022年度に実験で検討を行い、必要な備品を選定し購入することとした。
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