研究課題/領域番号 |
21K18162
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
水野 毅 埼玉大学, 理工学研究科, 名誉教授 (20134645)
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研究分担者 |
高崎 正也 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (10333486)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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キーワード | 力測定 / ゼロコンプライアンス / 原子間力顕微鏡 / 走査型顕微鏡 |
研究実績の概要 |
探針先端に力が作用しても,先端の位置及び姿勢が変わらないプローブの開発を試みた. (1)プローブ支持機構の設計 開発するプローブ支持機構は,カンチレバーを固定している部材(以下では検出体と呼ぶ)の位置と姿勢を変えることによって,探針先端の位置及び姿勢(角度)を制御するもので, MEMS技術を利用して製作することを想定している.装置は,以下のような構成要素を持っている.① 検出体を支持すると同時に,制御しない自由度の運動を拘束する板ばね,② 検出体の3自由度の運動を制御するアクチュエータ,③ 探針先端の位置及び姿勢と,検出体の位置及び姿勢を検出するセンサ,②のアクチュエータとしては,マイクロ化が容易な静電アクチュエータ(Electrostatic actuator: ESA)を用いる.③のセンサに関しても,検出体については,MEMS技術を活用して静電容量形センサをアクチュエータと同時に作成する.検討を進めた結果,検出体を六角形状とすれば,仕様を満たしうるとの知見を得た.一方,探針位置についてもMEMSセンサで検出することを検討したが,MEMSセンサでは,回転運動によって電極間隔が変化してしまうため,3自由度の運動を検出することが難しいとの知見を得た. (2)単一自由度検証用実験装置の構築 上述したように,MEMSセンサでは,3自由度の運動を同時に検出することが困難であるので,各自由度ごとに負荷を与え,これに対してゼロコンプライアンスを実現する実験装置を開発することとした.そのための実験装置の設計を行った. (3)マクロモデルの設計・製作 (2)で行う各自由度ごとの試験では,目的とする3自由度ゼロコンプライアンス機構が実現できることを実証することができないので,これとは別にミリオーダの装置を製作して,実験を行うこととした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MEMS技術を利用した1自由度ゼロコンプライアンス機構の開発自体には成功している.新たに開発するプローブ支持機構は,カンチレバーを固定している部材(検出体)の位置と姿勢を変えることによって,探針先端の位置及び姿勢(角度)を制御するものである.開発する実験装置では,プローブ先端へ負荷を与える機構及びプローブ先端の位置及び姿勢を検出するセンサもMEMS技術を利用して製作する計画であった.検討を進めた結果,支持機構自体は,検出体を六角形状とすれば,仕様を満たしうるとの知見が得られ,この知見に基づいた3自由度ゼロコンプライアンス機構の設計はすでに完了している.一方,後者については,MEMSでは,回転運動によって電極間隔が変化してしまうため,実現が難しいとの知見を得ている.
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今後の研究の推進方策 |
(1)新たに開発する装置の設計は完了しているので,直ちに各実験装置の製作を行う. (2)制御システムの構築 作用点に負荷を与えても,先端の位置及び姿勢が変わらない状態が保てるような制御系を構築する. (3)測定性能の評価 単一自由度検証用実験装置を用いて,作用点に作用する力を階段状に増加させたときの検出体の位置及び角度から作用力を推定する.つぎに,作用力を減少させて同様な測定を行う.これらの測定によって,試作した装置の直線性・分解能やヒステリシス誤差などの静特性を把握する. (4)開発した力検出プローブを利用した非接触形原子間力顕微鏡の実現を試みる.具体的には,既存の原子間力顕微鏡のプローブを,開発した力検出プローブに置き換えて,物体表面の観測を行う.そして,観測結果を従来の装置で得られた結果と比較し,その違いが何を意味するか,について考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費を計上していたが,新型コロナウィルス感染症のため,出張を取りやめたため,未使用となったことが主な要因である.徐々に出張できる状況となりつつあるので,2022年度は,積極的に国内外の学会で発表する計画である.また,特に半導体不足のため,物品の納入が数ヶ月単位で遅くなり,年度内での支払が間に合いそうにないことも使用を見合わせた一因となっている.2022年度は,この分を含めて,当初の研究計画にしたがって,使用する予定である.
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