研究課題/領域番号 |
21K18164
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
尾上 弘晃 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30548681)
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研究分担者 |
岩瀬 英治 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70436559)
瀧ノ上 正浩 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (20511249)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | DNAゲル / 構造色センサ / 機械的メタマテリアル / 生化学センサ / DNAアプタマー |
研究実績の概要 |
本年度は下記の2項目について主に研究を実施した. (1) 機械的な機構による刺激応答性ゲルの変位拡大検証: 設計指針を確立するために,ミリメートルスケールの機械的ステップ機構(~5 mmスケール)により,刺激応答性ゲルの膨潤・収縮の変位拡大の検証を行う.機械的メタマテリアル(変位拡大率は5-20倍)をフォトリソグラフィーにより造形し,刺激応答性ゲル(検知部)と構造色ゲル(読取り部)をそれぞれパターニングし,刺激応答性ゲルの膨潤・収縮を拡大し構造色ゲルの変形とするデバイスを構築した.原理検証実験のため,DNAアプタマーゲルより扱いが容易な温度応答性のpNIPAMゲル,およびpNMUMを検知部として利用し,シリカコロイドを分散させたアクリルアミドの構造色ゲルを読取り部として用い,刺激に対する反射波長スペクトル変化を評価したところ,通常の約2倍の感度での検知に成功した. (2) 機械的メタマテリアルの理論設計と評価: 研究項目(1)と並行して,機械的メタマテリアルの理論的な解析および設計・評価を行った.上記のステップ機構による刺激応答性ゲルの収縮を拡大して構造色ゲルに伝達する機構をデザインを定式化し,材料力学の熱膨張に落とし込むことで理論式を構築した.これによりデバイスのデザインによりどの程度の感度拡大が可能であるかの予測が実現した.ただし,材料の変形が微小変形を仮定しているモデルのため,実際のヤング率が文献値と異なる範囲を考慮する必要があることも同時に判明した.そのため,デバイスで使用するゲルの機械特性の評価を実施し,力学的なパラメータを取得した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画はおおむね順調にすすんでいる.本年度物品として計上した同軸落射照明顕微鏡については,他の予算により取得の目処がたったため購入は見送ることにした.また,本研究を補佐する技術員の確保が可能となったため,謝金としてアルバイト代を執行した.この補佐員の雇用により,研究が次年度以降より進むことが期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,研究項目(3)のDNAアプタマーゲルの理論設計と評価に着手する.DNAアプタマーのライブラリを参照し,対象物質の結合により大きな構造変形を起こすDNAアプタマーゲルの理論設計および評価を行う.DNAアプタマーのデザインやゲル素材の構成比率を検討することでゲルの感度および収縮力の評価を行うと同時に,トロンビンやIgG抗体などの生体タンパク質,トリプトファンなどのアミノ酸,Cu, Hgなどの重金属イオンなどの多様な生体・環境物質の刺激に応答するDNAアプタマーゲルを候補として検討し,検出対象および応用範囲を探索する.
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次年度使用額が生じた理由 |
経費として計上していた落射照明顕微鏡が他の予算より確保できたため,導入は見送った.また年度後半より,本研究を補助する技術員の確保の見込がたったため,技術員雇用のための謝金として次年度以降に予算を合わせて使用する予定である.
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