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2021 年度 実施状況報告書

超高品質フルエピタキシャルスピン構造による極微細バリスティックスピントランジスタ

研究課題

研究課題/領域番号 21K18167
研究機関東京大学

研究代表者

大矢 忍  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20401143)

研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2024-03-31
キーワードスピントランジスタ / エピタキシャル / 分子線エピタキシー / 微細化
研究実績の概要

本提案では、研究代表者が長年にわたり開拓してきた超高品質オールエピタキシャル単結晶からなる強磁性金属/半導体ハイブリッドヘテロ構造の作製技術と、最近確立することに成功した極単チャネルデバイスの微細加工技術を用いてスピントランジスタを作製し、電子の「バリスティック伝導」による高い磁気抵抗比をもつスピントランジスタを実現することを目指している。
初年度は、実際にFe/MgO/p-Geからなるオールエピタキシャル単結晶ヘテロ接合を分子線エピタキシーを利用して作製し、68 nmのチャネル長を有する横型スピンバルブ素子の作製に成功した。本デバイスにおいて、3Kの低温で、0.55%の磁気抵抗比を得ることに成功した。この値は、Geを用いた横型スピンバルブ素子で報告されている値としては、世界最高値である。JaffresとFertによって2001年に提唱された拡散領域におけるスピン依存伝導モデルを用いて、拡散領域を電子が通過した際に得られる磁気抵抗比を見積もったところ、本素子のパラメータを用いる限り、最大でも0.001%程度の値にしかならないことも明らかになった。実験的にはその500倍程度の値が得られたため、この結果は、我々のデバイスにおいては、電子は拡散的にではなく、バリスティックに伝導していることを強く示唆している。チャネル長の微細化により、スピントランジスタの磁気抵抗が増大する可能性を初めて示した結果であると言える(論文準備中)。
一方、素子のさらなる微細化も進めており、目標に近いレベルまで素子を微細化できることも確認することができた。同時に、他の様々な材料系を用いた単結晶ヘテロ構造についても、研究を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

微細加工のための電子線描画の条件出しに時間を要しているものの、想定内の範囲であり、半年でほぼ目標に近いレベルの微細化が可能であることを明らかにすることができた。予想以上に、磁気抵抗比が向上してきている。若干予定よりも早く、他の材料系の研究を始めることもできており、極めて順調に研究が進んでいると言える。

今後の研究の推進方策

昨年度は68nm程度のチャネル長を有する様々な横型スピンバルブ素子に対して、磁気抵抗測定を行ったが、今年度は、さらにチャネル長を短くしたデバイスを作製し、同様の測定を系統的に進めたい。スピン注入の根拠となるハンル効果測定なども、追加で行っていく予定である。現時点では、バリスティック伝導領域でハンル効果がどのように現れるのかは定かではなく、本テーマは研究意義が大きいと考えている。また同時に、ゲート電極の作製技術の確立を目指す。ゲート絶縁膜として、アルミナやハフニアなどを用いて、電流のゲート変調を行い、それが磁気抵抗比にどのような影響を与えるのかを検証していきたい。一方、バリスティック伝導が起こる際のスピン依存伝導機構の解明に向けて、強束縛近似などを用いて、理論計算をを用いて進めていきたい。一方、他の材料系からなるオールエピタキシャルヘテロ界面も開拓しつつ、それらを用いたスピントランジスタや横型スピンバルブ素子を作製し、同様に磁気抵抗比を測定し、デバイス応用への可能性を調べていく予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [学会発表] 100 nm以下の短チャネルを有するGeベース単結晶横型スピンバルブ素子における磁気抵抗効果の増大2022

    • 著者名/発表者名
      鶴岡駿、但野由梨子、Le Duc Anh、田中雅明、大矢忍
    • 学会等名
      応用物理学会 強的秩序とその操作に関わる研究会 第14回研究会
  • [学会発表] Geベースオールエピタキシャル単結晶横型短チャネルスピンバルブ素子における 大きな磁気抵抗効果の観測2022

    • 著者名/発表者名
      鶴岡駿、但野由梨子、Le Duc Anh、田中雅明、大矢忍
    • 学会等名
      第13回低温科学研究センター研究交流会
  • [学会発表] Geベースオールエピタキシャル単結晶横型短チャネルスピンバルブ素子における大きな磁気抵抗効果の観測2022

    • 著者名/発表者名
      鶴岡駿、但野由梨子、Le Duc Anh、田中雅明、大矢忍
    • 学会等名
      第69回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] オールエピタキシャル単結晶ヘテロ接合を用いた新スピン機能創成2021

    • 著者名/発表者名
      大矢忍、Le Duc Anh、金田真悟、荒井勝真、徳永将史, 関宗俊、田畑仁、田中雅明
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 酸化物界面における高移動度二次元p型伝導とトランジスタ応用2021

    • 著者名/発表者名
      大矢忍
    • 学会等名
      日本学術振興会・産学協力委員会 R025先進薄膜界面機能創成委員会 リトリート学習会
    • 招待講演
  • [学会発表] Geベース単結晶横型スピンバルブ素子におけるチャネル微細化による磁気抵抗比の増大2021

    • 著者名/発表者名
      鶴岡駿、但野由梨子、Le Duc Anh、田中雅明、大矢忍
    • 学会等名
      第26回半導体におけるスピン工学の基礎と応用(PASPS-26)
  • [備考] 東京大学 大学院工学系研究科 電気系工学専攻 大矢研究室

    • URL

      http://www.cryst.t.u-tokyo.ac.jp/ohya/

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公開日: 2022-12-28  

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