研究課題
本研究は、都市下水から回収した抗体遺伝子を用いて抗体医薬の合成を行う手法の開発に取り組むものである。研究2年度である令和4年度においては、前年度にPCRにより下水から取得することに成功した免疫細胞由来遺伝子の増幅産物について、次世代シーケンス解析を行うためのプロトコル構築に取り組んだ。構築したプロトコルは全部で9ステップから成り、1)下水からの固形物回収、2)遺伝子抽出、3)cDNA合成、4)PCR(1回目)、5)PCR(2回目)、6)電気泳動、7)DNA濃度測定、8)ライブラリ作成用PCR、および9)次世代シーケンシング解析、である。さらに、次世代シーケンシング解析結果の分析方法についても、バイオインフォマティクス用ソフトウェアを用いて、分析シーケンス(パイプライン)を構築した。このパイプラインを適用することで、得られた遺伝子配列解析結果を用いて系統樹を作成することができる。最終的に、実際に下水から得られた遺伝子配列を用いて、PCRに用いるプライマーおよび温度設定を含め、上記の一連の作業をについて最適化を行った。その結果、Vollmersらが2013年に発表したプライマーを用い、アニーリング温度60度でPCRを行うことで、最も効率よくPCR産物を得ることが可能であることが判明した。以上の成果をもとに、研究3年度目である令和5年度においては、新型コロナウイルス感染症が発生していた期間に採取して保管してある下水を対象として、抗体遺伝子の取得を目指す。
2: おおむね順調に進展している
PCRを用いた下水中抗体遺伝子の増幅に成功し、およびその次世代シーケンシング解析のプロトコルの最適化を達成している。下水サンプルからの抗体遺伝子取得を進めるだけの段階に至っており、全体の半分まで研究は進んでいると言えるので、「おおむね順調に進展している」と評価した。
これまでに過去複数年間に渡って都市下水サンプルを冷凍保存しており、DNAである抗体遺伝子はこれらのサンプル中に無傷のまま残存していることが期待される。確立されたプロトコルをこれらのサンプルに適用し、抗体遺伝子の取得を進めていく。得られた結果は、当時流行していた感染症患者数との比較等により、下水中抗体遺伝子の出現傾向に関する分析にも用いる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
Science of the Total Environment
巻: 858(1) ページ: 159816
10.1016/j.scitotenv.2022.159816
巻: 807 ページ: 150722
10.1016/j.scitotenv.2021.150722