研究課題/領域番号 |
21K18179
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大森 俊洋 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60451530)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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キーワード | エントロピー / 熱力学 / 相変態 / 超弾性 / 形状記憶効果 |
研究実績の概要 |
各種合金における定圧比熱を緩和法、熱流束法により精密に測定し、母相とマルテンサイト相のエントロピー差を求めることを目的として実験を行った。モデルケースとしてFe-Ni二元系合金のFCC-母相とBCC-マルテンサイト相の比熱測定を行った。はじめに、Ni濃度とマルテンサイト変態温度、磁気変態温度の関係を電気抵抗や振動型磁力計を用いて詳細に調査し、熱的なマルテンサイト変態が生じる臨界組成を決定した。臨界組成近傍の組成を有する母相合金、マルテンサイト相合金を準備し、各相の比熱を測定してエントロピー差を決定した。さらに、DSCにより変態潜熱を求め、仮定した散逸エネルギーを用いることで変態の駆動力を推定し、比熱やエントロピー差が妥当であることを検証した。DSCで検出された変態に伴う反応を、冷却中その場光学顕微鏡観察と加熱中その場EBSDの解析結果を対応させて考察し、マルテンサイト逆変態中の組織変化と温度の関係を把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験によりエントロピー差を決定することは本研究において重要な位置づけを占めており、モデル合金を用いて比熱測定とエントロピー差の決定を行うことで、その手法の確立を行うことができた。2つの測定方法を併用することで、特に熱流束法における近似方法を検討し、より精度の高い比熱データが得られることがわかった。また、変態潜熱の情報を利用することで変態の駆動力の検証も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
比熱測定、エントロピー差の決定手法を確立したことで、今後、各種合金に対する実験、解析を実施することができる。さらに、実験データを基に熱力学解析を進めていき、超弾性や形状記憶合金の材料特性との関連性を考察していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
比熱測定や組織観察を行う合金組成を絞り込むことで解析を実施できたため、必要な消耗品を想定よりも少なくすることができた。一方、次年度は他の合金系に拡張する予定のため、多くの消耗品費が必要にあると考えられる。
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