研究課題/領域番号 |
21K18189
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
斉藤 好昭 東北大学, 国際集積エレクトロニクス研究開発センター, 教授 (80393859)
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研究分担者 |
手束 展規 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40323076)
池田 正二 東北大学, 国際集積エレクトロニクス研究開発センター, 教授 (90281865)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2026-03-31
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キーワード | 反強磁性スピントロニクス / スピン軌道トルク / 磁気抵抗効果 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、本質的に微細化限界が生じない『反強磁性体を用いた超高密度メモリデバイス』の動作原理を実証し、超大容量・超高速性・低消費電力性を有する次世代メモリデバイスを開拓することにある。 令和4年度は、書込み用電極として昨年度提案したSynthetic反強磁性構造の探索を深耕するとともに、大きな読み出し信号が得られる反強磁性体の探索も進めた。また、昨年度に改造した超高真空スパッタ装置を用い、書込み用電極として有望なバルク反強磁性体RuO2の作製に取り組んだ。以下に得られた知見を示す。 (1)昨年度提案したCo/Pt/Ir/Pt/Co系Synthetic反強磁性書込み用電極(Phys. Rev. B 105, 054421 (2022))のSOT書込み効率の更なる向上を目指し、PtをPt-Cu合金に変えたSynthetic反強磁性書込み用電極を作製し、SOT書込み効率の評価を行った。その結果、Co間の層間の相互作用がほぼ等しい試料で比較すると、PtリッチのPt-Cu合金Synthetic反強磁性書込み電極において、SOT書込み効率が向上できることが明らかとなった。 (2)昨年度見出したCo/Pt/Ir/Pt/Co系Synthetic反強磁性書込み用電極上に、IrMn/MgO/PtからなるTAMR接合読出し用素子を作製し、Synthetic反強磁性書込み用電極のCo層とIrMn層との界面に働く磁気的交換結合について調べた。その結果、IrMnの膜厚を4nm以上にすると、Co層の膜面垂直方向に、一方向磁気異方性が付与できることを見出した。 (3)バルク反強磁性書込み用電極の候補とし、スピンスプリッター効果を有する反強磁性体RuO2を選択し、その作製に取り組んだ。その結果、熱酸化Si基板上に(111)配向したRuO2の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、書き込み用のSynthetic反強磁性構造のSOT書込み効率の向上に成功するとともに、Synthetic反強磁性書込み電極構造の上にIrMn/MgO/PtからなるTAMR接合読出し用素子を作製し、Synthetic反強磁性に一方向磁気異方性を付与することに成功した。また、バルク反強磁性書込み用電極の候補とし、反強磁性体RuO2を選択し、その作製に成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、書込み電極としてSynthetic反強磁性構造の探索を深耕するとともに、バルク反強磁性書込み用電極の候補とし、反強磁性体RuO2を選択し、その作製に成功した。また、大きな読み出し信号が得られる反強磁性体の探索も進め、Synthetic反強磁性書込み電極構造の上にIrMn/MgO/PtからなるTAMR接合読出し用素子を作製し、Synthetic反強磁性に一方向磁気異方性を付与することができることを見出した。 令和5年度からは、令和4年度までに得られた知見を用い、Synthetic反強磁性構造、RuO2反強磁性の書込み特性向上を目指すとともに、それらの書込み用電極構造上に、大きな読み出し信号が得られる反強磁性体/フェリ磁性体の探索も推し進める。具体的には、読出し信号増大に重要なスピン依存伝導機構と、書込み効率化に重要なスピン軌道トルク、及び、反強磁性体界面に働く磁気的交換結合機構の解明を進め、(1)大きな読み出し信号が得られる反強磁性体の探索、(2)高効率書き込みが可能な反強磁性体の探索、(3)その間の交換相互作用制御技術の確立を行い、(1)~(3)の全ての技術を採り入れたデバイスの動作を原理検証することで、反強磁性体を基軸とした超高密度・超高速・低消費電力スピンメモリを開拓する。 研究代表者の斉藤は、研究計画の立案、書き込み用反強磁性体/読み出し用反強磁性体の設計と探索を行い、反強磁性体を基軸にした超高密度スピンデバイスの高性能化を目指す。分担者の池田、手束は、代表者と共に、新規デバイスの作製を行う。手束は斉藤と共に、特殊な評価手法により、MR値、反強磁性体材料の反転効率と反強磁性2層構造の動作を調べ、反強磁性体エンジニアリングにフィードバックする。チームの総合力により、反強磁性体を基軸とした超高密度・超高速・低消費電力スピンメモリを開拓する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和5年度の研究計画を達成するため予算が足りないことが判明したため、令和4年度分を繰り越すこととした。 令和5年度中に、繰り越し分も含め令和5年度予算全額を使用予定である。
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