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2022 年度 実施状況報告書

機械的揺らぎを抑圧した2次元材料による高純度量子エミッタ

研究課題

研究課題/領域番号 21K18193
研究機関大阪公立大学

研究代表者

秋田 成司  大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (60202529)

研究分担者 石原 一  大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (60273611)
有江 隆之  大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (80533017)
研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2024-03-31
キーワード量子エミッタ / 揺らぎ / ナノ電気機械 / 2次元材料
研究実績の概要

本研究では原子層NEMS非線形ナノ機械振動子をプラットフォームとし、機械的振動のような低周波フォノンと光・電子系とを協奏させた量子マニピュレーションにより機械的揺らぎを量子極限まで抑圧し、線幅の狭い高純度な単一光子の生成とその応用に関する分野を開拓することを目的とし本年度は以下について検討を進めた。
1.フォトンと機械共振器のカップリング: 単原子層機械振動子と結合した発光体の発光現象が振動子の運動に与える影響とその制御の可能性を検討した。実験的には低温(4K)環境において光共振器構造を持つ機械的共振器に光子源をおき、その発光と機械振動のカップリングについて検討した。静的環境下だけでなく共振状態で光共振器構造由来の発光増強とピークシフトを確認した。理論的には、発光現象を微視的に記述する量子マスター方程式と微視的Maxwell方程式を、光学的共振器が存在する条件で連立させ光学応答を計算した。さらにその光学応答に基づいて機械振動子に印加される光圧を計算し、発光による反跳力が単原子層機械振動子の運動にどのような影響を与えるかを巨視的な運動方程式により明らかにしてきた。
2.ナノ機械振動子のモード間結合と機械的エネルギー移動の実現:単光子源となるhBNの下層にグラフェンを積層し静電駆動できる構造を検討した。この時、予期せず層間相互作用に起因すると思われる機械的な共振においてモード分裂および分裂したモード間でのエネルギー移動を見出した。また二つの弱く結合したナノ機械共振器間のエネルギー交換に起因する現象を観測した。さらに、積層デバイスで重要となる面内・面外熱(フォノン)伝導を明らかにしてきた。層間の相互作用がフォノンの伝導にどのように影響を与えているかを積層角の観点から論ずるため、量子エミッタとしても注目されているh-BNとグラフェンの層間熱コンダクタンスを計測した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では原子層NEMS非線形ナノ機械振動子を用い機械的振動のような低周波フォノンと光・電子系とを協奏させた量子マニピュレーションにより機械的揺らぎを量子極限まで抑圧し、線幅の狭い高純度な単一光子の生成とその応用に関する分野を開拓することを目的としている。
フォトンと機械共振器のカップリングに関する実験的研究に関しては試料構造の検討を完了し具体的な測定に取り掛かっている。また、単光子中心生成に関しても走査型電子顕微鏡(大気導入可能)を用いた電子線による形成を行った。理論的側面からは単原子層に存在する欠陥や量子ドットの発光の記述に先立ち、単原子層に面状の発光体が存在する場合に、発光が光学的共振器の効果によって単原子層機械振動子の振動モードにどのような影響を与えるかを計算した。その結果、機械振動子の固有振動数をシフトさせる光ばね効果が有意に現れることが明らかになった。これは光共振器効果により発光体の発光モードと機械的振動モードが結合した結果であり、発光による光ばね効果の存在を初めて指摘したものである。
ナノ機械共振器の結合とシステム化による機械的振動モードの冷却へ向け、ナノ機械振動子のモード間結合と機械的エネルギー移動を検討し、機械的振動の抑圧現象などを実現している。さらに、原子層の積層角度と層間のフォノン伝導の関係を明らかにするため、基板上のグラフェンをジュール加熱し、直上のh-BNの温度をラマン分光法で計測することで層間の熱コンダクタンスを調べた。積層角度18度において熱コンダクタンスが10^7 W/m^2 Kとなり、理論から予測される値より一桁小さい結果となった。これは層間の不純物による散乱が原因であると考えられる。
上記の結果からほぼ計画通り順調に進捗していると判断した。

今後の研究の推進方策

機械的揺らぎを量子極限まで抑圧し、線幅の狭い高純度な単一光子の生成するためにナノ機械共振器の結合とシステム化による機械的振動モードの冷却と発光中心生成について引き続き実験的な側面から検討を進める。さらに、理論的な側面からは面状の発光体を仮定して行った計算を欠陥や量子ドットの場合に適用し、発光による反跳効果が単一光子源としての性能にどのような影響を与えるかを明らかにしていく。また機械振動子の振動が発光体の線幅に与える影響を発光体の格子振動と機械振動子の振動の結合を取り扱うことにより評価する。このことにより単一光子源と機械的共振モードを結合させた場合の揺らぎ抑圧の度合いと量子エミッタの単一光子源としての純度の関係を明らかにし、実験結果の解析に資する。
hBNカラーセンター種類と歪みの効果の理解を促進させるため、グラフェンと積層するなどし、静的な歪を定量的に印加可能な試料を作製し発光線幅と歪との関係を明らかにする。さらに、2次元原子層薄膜内に制御良く歪みを印加する転写技術を利用し、歪みとフォノン伝導の関係も明らかにする。歪みの動的制御に資するため、ダイヤモンド中のNVセンターを利用した面内歪み計測手法の開発も同時にすすめる。

次年度使用額が生じた理由

旅費および学会参加費に予算計上していたがCOVID-19の影響で旅費および参加費の執行が出来なかったため使用額に差異が生じた。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Unusual resonance property of graphene/h-BN stacked mechanical resonators2023

    • 著者名/発表者名
      K. Yasoshima, R. Oishi, T. Arie, S. Akita
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Applied Physics

      巻: 62 ページ: SG1025~SG1025

    • DOI

      10.35848/1347-4065/acbc83

    • 査読あり
  • [学会発表] メンブレン型マイクロ機械振動子の発光誘起オプトメカニカル振動2023

    • 著者名/発表者名
      荒張秀樹、小西創太、秋田成司、石原一
    • 学会等名
      第70回応用物理学会春季学術講演会
  • [学会発表] 二次元材料の積層デバイスにおける層間熱輸送2022

    • 著者名/発表者名
      掛谷昂平、竹井邦晴、秋田成司、有江隆之
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会
  • [学会発表] 薄膜の発光が誘起するオプトメカニカル振動と光ばね効果2022

    • 著者名/発表者名
      荒張秀樹, 小西創太, 秋田成司, 石原一
    • 学会等名
      第33回光物性研究会
  • [学会発表] 発光により駆動するオプトメカニカル振動運動と光ばね効果2022

    • 著者名/発表者名
      荒張秀樹、小西創太、秋田成司、石原一
    • 学会等名
      第7回フォトニクスワークショップ
  • [学会発表] Si3N4膜を用いた発光駆動キャビティオプトメカニクス2022

    • 著者名/発表者名
      荒張秀樹、石原一
    • 学会等名
      日本物理学会
  • [学会発表] Unusual resonance property of graphene/h-BN stacked mechanical resonators2022

    • 著者名/発表者名
      K. Yasoshima, R. Oishi, K. Takei, T. Arie, S. Akita
    • 学会等名
      35th International Microprocesses and Nanotechnology Conference
    • 国際学会
  • [学会発表] グラフェン/h-BN機械共振器の特異な共振特性2022

    • 著者名/発表者名
      八十島和輝、大石竜、竹井邦晴、有江隆之、秋田成司
    • 学会等名
      第83回応用物理学会秋季学術講演会
  • [図書] 「Phonon Engineering of Graphene by Structural Modifications」in Quantum Hybrid Electronics and Materials2022

    • 著者名/発表者名
      Takayuki Arie and Seiji Akita
    • 総ページ数
      341
    • 出版者
      Springer Nature Singapore Pte Ltd.
    • ISBN
      978-981-19-1200-9
  • [備考] 大阪公立大学工学研究科 電子物理工学分野 ナノデバイス研究グループ

    • URL

      http://www.pe.osakafu-u.ac.jp/nanodevice-pe4/

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公開日: 2023-12-25  

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