研究課題/領域番号 |
21K18194
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
新宅 博文 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 理研白眉研究チームリーダー (80448050)
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研究分担者 |
口丸 高弘 自治医科大学, 医学部, 講師 (10570591)
錦井 秀和 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (30512834)
塩見 晃史 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 特別研究員 (60880557)
金子 泰洸ポール 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 特別研究員 (80873504)
鳥井 孝太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 特別研究員 (80878463)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 1細胞 / 電気泳動 / マイクロ流体工学 / RNA-sequencing / 造血幹細胞 |
研究実績の概要 |
細胞の生命活動や運命決定に対する影響を抑えながら細胞内財政分子の一部を抽出する方法ナノエレクトロポレーション法の開発を行なった。本方法はナノポア周辺において外部電場時に発生する集中電場を活用するもので、ナノポアに接触した細胞膜の分子透過性を可逆的に上昇させると同時に内在性分子を電気泳動あるいは電気浸透流により抽出するものである。本年度はナノスケールの内径を有するキャピラリを用いて印加電圧条件が細胞に与える摂動について探索した。HeLa細胞を用いた検討では、0.9 pg程度のtotal RNAを抽出しつつ細胞を生存状態に維持できる条件を得た。ここで用いたHeLa細胞は細胞周期蛍光レポータFucciを導入した細胞株であり、蛍光観察から細胞周期進行を観察したところ、得られた電圧条件で細胞周期進行はRNAの抽出を行なっていない対照群とほぼ同等の細胞周期進行を示した。また、同一の細胞に対して2.5時間おきに4回、すなわち7.5時間連続してRNAを抽出しても細胞周期進行に変化は見られず、また、安定してRNAを抽出できることを確認した。本条件でHeLa細胞からRNAを抽出し、次世代シーケンスライブラリを作製した。一部解析データを取得し、遺伝子発現に耐え得る品質であることを確認できた。引き続きデータを取得し、投稿論文として纏める計画である。これらの計測を造血幹細胞へ展開するため、試験管内増幅培養により作製した造血幹細胞に対するナノエレクトロポレーションの最適条件を探索した。マウス大腿骨の骨髄から採取した細胞をpolyvinyl alcohol環境で増幅培養し、その後ナノエレクトロポーレションを実施したところ、培養細胞と異なる電圧条件が必要であり、さらなる条件探索が必要である可能性が明らかになった。引き続き研究グループで議論を行い、問題点を洗い出す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
RNA抽出における電圧条件は、パルス幅、電圧値、パルス数などさまざまなパラメータがあり、それらがRNAの抽出量および細胞周期進行に与える影響を多角的に検討する必要があった。これらの検討は、次世代シーケンス解析だけでなく、qPCR等を活用することで効率よく進められると計画していたが、COVID-19の影響等もあり、実験に必要な資材の納入が遅れるなど一部研究計画通り進めることが困難であった。一方で、その時間を活用して、データ解析のアルゴリズム開発を進めるなど次年度以降に開発する内容を前倒しで検討することで研究進捗の遅れを最小限に抑える工夫を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
研究資材調達の遅れは徐々に緩和されており、研究計画にしたがって推進が可能な状況になってきている。2021度末に作製した実験試料に対する解析が実施できていなかったが、2022年度初旬に解析を実行する。解析結果が良好であれば、できるだけ実験試料の作製を急ぎ、培養細胞を対象としたナノエレクトロポレーションに関する内容を論文として纏める。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部研究資材の調達に遅延があったため。
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