研究課題/領域番号 |
21K18200
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡邉 則昭 東北大学, 環境科学研究科, 教授 (60466539)
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研究分担者 |
坂口 清敏 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (50261590)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2027-03-31
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キーワード | 地熱 / 貯留層 / 二酸化炭素 / フラクチャリング / 誘発地震 |
研究実績の概要 |
近年の研究により,超臨界地熱資源は大陸地殻の大部分を占める花崗岩質岩石内でも形成されることがわかったが,生産に必要な透水性が十分でない場合に対応するための人工き裂システム形成法が必要とされている。研究代表者らはこれまでに,花崗岩の超高温水圧破砕実験を実施し,従来型の水圧破砕とは全く異なる,抽熱に有利な高透水性網状き裂を形成する超高温水圧破砕(比較的低い水圧でき裂が形成され,誘発地震のリスクが小さい)を解明し,水圧破砕に関する新しい学術体系を創出した。その結果,超高温でなくとも超低粘度の流体(例えば,CO2)を用いた場合,より低温の在来型地熱環境でも網状き裂が形成できる可能性を見出した。本研究では,CO2を用いた岩石破砕実験等を通じて,広範な地熱環境における超低粘度流体による岩石破砕現象と,本現象を利用したCO2利用/誘発地震抑制型・高透水性網状き裂システム形成法に関する新学術を開拓することを目的とする。
本年度は昨年度の実施状況報告書に記載の通り,既存の水を破砕流体としたき裂形成法と比較した場合の, CO2を用いた網状き裂形成法の利点および課題の明確化と,その解決策の提案に取り組んだ。先行研究によれば,比較的低い圧力で広範囲に熱抽出に有利な高密度き裂ネットワークを形成でき,誘発地震発生のリスクが低いという利点があると考えているが,これが真実かどうかは実験データが不足しており不明である。そこで,き裂のせん断滑りによる誘発地震模擬実験を実施した結果,CO2は水と比較して,誘発地震発生のリスクに大きな違いはないが,き裂のせん断すべりと同時に網状き裂が形成できる利点があることがわかった。さらに昨年度明らかになった,比較的低温でのき裂形成の場合,き裂の密度や開口幅が小さくなるという課題を解決しうるキレート剤を用いたき裂開口幅増大法の検討を行い,最適pH条件を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度得られた研究成果は,当初計画における令和7年度以降の研究成果に相当するため,当初計画以上に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
キレート剤を用いたき裂開口幅増大法の検討を引き続き実施する。具体的には,これまでよりも大型の岩石サンプルを使用し,実際の貯留層環境に近い条件でのキレート剤流通実験を行い,本手法の適用性や最適実施方法に関しての検討を行う。
さらに本手法に対して,ドイツGFZの研究者が関心を示し,同研究機関の協力のもと地熱貯留層の造成に関する研究を実施しているTU Darmstadtの博士課程学生が,研究生として研究代表者の研究室でドイツの地熱フィールドへの本化学的刺激法の適用に関する研究を実施することになったため,この国際共同研究も推進したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたよりも円滑に研究が進展し,予定していた実験回数よりも少ない回数で本年度の目標を達成できたことや,新型コロナウィルスにより旅行が出来なかったことにより,次年度使用額が生じた。研究が進展したことで,詳細に検討すべき現象が明らかになったため,次年度使用額分は主にこの当初よりも詳細に検討する必要が生じた現象に関する実験を実施するために使用する計画である。
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