研究課題/領域番号 |
21K18207
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西澤 精一 東北大学, 理学研究科, 教授 (40281969)
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研究分担者 |
永富 良一 東北大学, 医工学研究科, 教授 (20208028)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | ウイルス粒子 / エンベロープ / RNA / 蛍光プローブ / 検出 |
研究実績の概要 |
本研究では、ウイルス粒子表面のエンベロープ構造及び内包されているゲノムRNAを標的とする蛍光性分子プローブ(検出試薬)をそれぞれ設計・合成し、両者の併用に基づく全く新しいウイルス粒子検出・可視化(イメージング)技術を開発する。具体的には、(i)ウイルス粒子表面の高曲率脂質二重膜(エンベロープ:直径約100 nm)に高選択的に結合・蛍光応答を示す両親媒性α-helixペプチドプローブ、及び(ii)ウイルス粒子のエンベロープ構造を迅速に透過・内部に拡散し、ゲノムRNAに特異的に結合・蛍光応答を示すRNA染色蛍光色素を開発する。2種類の蛍光性分子プローブを併用することで、環境中ウイルス粒子(エンベローブ構造&内包RNA)の存在をダブル検出(2重染色)できる簡易技術を開発、医療現場やウイルス研究で用いられる様々な材料に付着したウイルス検出へと適用することで方法論としての基礎と有用性を実証する。 令和3年度の研究実績の概要は下記のようになる。 (a) 新規生細胞RNA染色蛍光色素として、世界トップレベルの高輝度モノメチンシアニン色素の開発を達成した(特願2021-134803:特許第7029841号)。新規に開発したRNA染色蛍光色素は、off-on型の優れたlight-up応答機能と膜透過性を併せ持ち、生細胞中のRNA(核小体)を明瞭に可視化(イメージング)することができる。 (b) 本研究課題に関連して、RNAが脂質膜に内包された製剤(ワクチン)の品質管理技術を提案した(PCT/JP2021/030716)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように、現時点において、世界トップレベルの高輝度RNA染色蛍光色素の開発に成功している(特願2021-134803:特許第7029841号)。また、両親媒性α-helixペプチドプローブを活用することで、ウイルス粒子(カゼコロナウイルス)のエンベローブ構造を検出できることを見出している(未発表)。今後、ウイルス粒子(内包RNA&エンベローブ構造)検出プローブとしての機能をより詳細に評価するとともに、これらの検出プローブの機能改良をさらに進めることで、その有用性を実証、実用に供しうる新しいウイルス粒子検出・可視化技術の実現が期待できる。 以上のように、本研究は順調に進展していると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
概ね当初の研究計画に従って、以下のように研究を進める。 (a) ウイルスエンベローブ構造検出試薬:代表者らは、タンパク質の生体膜結合様式を模倣することで、ウイルス粒子と同程度のサイズを持つエクソソーム(直径100 nm)を標的とする両親媒性α-helixペプチド蛍光試薬の開発に成功している(RSC Advances, 2020, 10, 38323)。サイズの小さい高曲率膜には、脂質パッキング欠損(LPD)が存在していることが知られており、両親媒性α-helixペプチド(の疎水面)がLPDに結合することで、高曲率膜に対する高選択性が発現する。本研究では、この分子設計指針をウイルス粒子に適用・応用し、ウイルスエンベロープ構造(高曲率脂質二重膜:直径約100 nm)に特異的に結合しうる両親媒性α-helixペプチド蛍光試薬を開発する。 (b) エンベロープ(脂質二重膜)透過性RNA検出試薬:代表者らは、細胞膜透過性に優れたRNA染色蛍光試薬の開発実績があり(Anal. Chem., 2019, 91, 14254)、現時点において、世界トップレベルの高輝度RNA染色蛍光色素の開発に成功している(特願2021-134803:特許第7029841号)。引き続き、新規RNA染色蛍光色素の開発を進めるとともに、ウイルス粒子内包RNA検出試薬としての機能を評価する。また、内包ゲノムRNAに対する塩基配列選択性を付与することで、ウイルス識別が可能なウイルスRNA検出試薬の開発を合わせて進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
出席を予定していた学会がオンライン開催になったため、旅費が不要になったため。また、論文投稿料を確保したため(現在、投稿中)。 令和3年度の未使用予算は、令和4年度の予算と合わせて有効に活用する。
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