現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年度は、令和3, 4年度見出した塩化ナトリウム(NaCl、ナトリウムイオン(Na+)、塩化物イオン(Cl-))の影響を受けない酸化ルテニウム(RuO2)酸素発生助触媒を用いた検討を行った。 ・種々の光触媒材料(タンタル酸銀(AgTaO3)やチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、タンタル酸ビスマス(BiTaO4))を作製し、それらに含侵法にてRuO2を担持した(BiTaO4/RuO2, SrTiO3/RuO2, AgTaO3/RuO2)。BiTaO4/RuO2では水を完全分解できす、SrTiO3/RuO2では海水を完全分解できず、AgTaO3/RuO2では海水を完全分解できた。 ・犠牲剤を用いた水の半反応による水素(H2)発生では白金(Pt)担持SrTiO3 (Pt/SrTiO3)ではNaClあり(擬似海水)の場合、なしに比べて大きくH2発生量が低下したもの、Pt担持BiTaO4 (Pt/BiTaO4)ではNaClあり、なしにかかわらず同じH2発生量であった。 以上の結果から、光触媒材料によってNaClの影響の有無があること、H2発生助触媒であるPtが必ずしもNaClの影響を受けているわけではないことが明らかとなった。海水分解に向けてNaClがH2発生反応に与える影響と共にNaCl光触媒材料に与える影響の再検討を開始した。 検討を進めた結果、光触媒材料によってはNaClの影響を受けないものも存在することが分かり、海水分解に向けた新たな視点が加わったと考えている。以上からおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
・R5年度、NaCl存在下でもプロトンを還元し水素(H2)を発生できるCrOx/Pt,Au/ZnRh2O4、すなわちH2助触媒Pt, AuをCrOxで保護したCrOx/Pt,Auを担持したロジウム酸亜鉛(ZnRh2O4)、とNaClの存在下でも水を選択的に酸化し酸素(O2)を発生できる酸化ルテニウム担持バナジン酸ビスマス(RuO2/BiVO4)を複合化したCrOx/Pt,Au/ZnRh2O4/Au/BiVO4/RuO2の疑似海水での分解実験を行なったが海水分解できなかった。両者を接合しているAuがNaClの影響を受けていると考えられるため、接合に寄与するAuもCrOxによる保護の検討を今後も進めていく。 ・RuO2がNaCl存在下でも水を選択的に酸化できる理由を第一原理計算の手法を用いて解明を試みている。Cl-の吸着で説明ができそうなところまで進んでいるため、引き続き検討する。同様の考察が可能か、Pt,Au/ZnRh2O4, CrOx/Pt,Au/ZnRh2O4で比較検討を行う。 ・BiTaO4光触媒がNaClの影響を受けずにH2を発生できることが明らかとなったため、まずは光触媒材料を構成する元素に注目しBi, Taから構成されるタンタル酸ビスマス(Bi3TaO7, Bi7Ta3O18)の疑似海水中での分解を試みる。
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