研究課題/領域番号 |
21K18214
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 慎一 京都大学, 化学研究所, 准教授 (70534478)
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研究分担者 |
萩原 正規 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (40403000)
勝田 陽介 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (50632460)
福田 将虎 福岡大学, 理学部, 准教授 (90526691)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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キーワード | 機能性RNA / 核酸 / 小分子化合物 / ケミカルバイオロジー / ビッグデータ / RNA編集 |
研究実績の概要 |
【研究の目的と実施計画】 本研究では,RNA編集が担う新規タンパク質翻訳制御機構の発見と革新的な核酸医薬設計法の確立を目標に挙げる.目標①:タンパク質翻訳に影響するアデニンからイノシンへのRNA編集(A-to-I RNA編集)により形成されるイノシン含有G-quadruplex構造 (iG4構造)の大規模探索を行う.RNA 編集によるmRNA構造制御とそれに伴うタンパク質翻訳制御の機構の解明は,タンパク質翻訳制御機構に新たな学術概念を与える.目標②:DNA origamai技術を利用してmRNA上のG4構造を近接させることで超安定高次構造を誘導する標的mRNA選択的な新規遺伝子ノックダウン法を確立し、革新的 な核酸医薬創出に繋げる. 【実績】 初年度には,研究課題を遂行するための第一歩である目標①を達成するために,網羅解析によるビッグデータの取得を試みた.A-to-I RNA編集により誘導されるiG4構造の中で,タンパク質翻訳に影響するiG4構造を探索するために,採択者自身が開発したRNA G-quadruplex結合小分子化合物RGB-1を利用した.また,細胞内で行われる内在性mRNAのA-to-I RNA編集を増強または抑制するために,A-to-I RNA編集酵素ADARの過剰発現細胞およびノックダウン細胞の作製条件を確立した. 作製したADAR1・ADAR2の過剰発現細胞およびノックダウン細胞にRGB-1を処理した細胞を回収し,細胞抽出液を作製後,iTRAQプロテオーム解析によりタンパク質発現量を比較した. また,同一の細胞抽出液からtotal RNAを調整して,RNA seq.解析を行い,mRNA発現量を比較した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【現在までの進歩状況】 タンパク質翻訳に影響するA-to-I RNA編集により形成されるイノシン含有G-quadruplex構造 (iG4構造)の大規模探索を行うため,A-to-I RNA編集酵素ADARの過剰発現細胞およびノックダウン細胞の作製し,その細胞をRGB-1で処理した後に,回収した細胞抽出液からRNA seq.解析とプロテオーム解析を済ませた.初年度には,研究課題を達成するための第一歩を確実に遂行できている.
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今後の研究の推進方策 |
RNA seq.解析とプロテオーム解析から得られた2つのビッグデータを組み合わせて,再解析することにより,A-to-I RNA編集酵素ADARによる編集により誘起されるイノシン含有G-quadruplex構造 (iG4構造)を網羅的に発見する.A-to-I RNA編集によるmRNAの高次構造変化に伴うタンパク質発現制御機構を解明することは,サイエンスの現在の動向を踏まえても極めて高いインパクトがあるため,2つのビッグデータから導き出されたiG4構造の機能を解析した後に,国際的に評価の高い科学論文への投稿を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
ビッグデータの取得のために行う2つの網羅解析(RNA seq.解析・プロテオーム解析)外注サービスが高額であることもあり,サービス利用前に,試験サンプル調整の条件検討を念入りに行ったため解析サービスへの発注が遅れた.解析用タンパク質サンプルおよびRNAサンプルは,細胞内で行われる内在性mRNAのA-to-I RNA編集を増強または抑制された,A-to-I RNA編集酵素ADARの過剰発現細胞およびノックダウン細胞から調整される.ADARの過剰発現細胞およびノックダウン細胞におけるADERの発現状態は,ウエスタンブロット法により評価した.ADARの過剰発現細胞およびノックダウン細胞の調整最適条件を確立した後に,2つの網羅解析サービスを利用したが,共に海外企業のサービスであり,発注からデータ取得まで5ヶ月かかるため,年度内に全ての試験を終えることが出来なかった.そのため,更なる解析は次年度以降に発注を行うことにした.
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