研究課題
当該年度においては、ペプチドの1分子ナノポア計測実現を目指し、平面膜上での脂質膜再構成とSecYEGチャネルタンパク質の挿入、及びSecAタンパク質との複合体に対する基質ペプチドの膜通過シグナルの検出を試みた。4つのチャネルを同時計測可能なナニオンテクノロジーズ社のOrbit miniと温度コントローラーを導入し、温度条件を変えながら脂質膜の構築を試した。脂質膜は多重膜にならず、脂質二重膜の単重膜が形成される条件を決めることができた。さらに、SecYEGが膜に挿入されることを印加電圧を可変にした電流応答の変化で複数回確認できたが、導入効率は低いままであったため、ペプチド通過計測には至らなかった。次年度においては、これらを改善するために、PURE systemを用いた無細胞合成系によるSecYEG挿入や脂質膜の組み合わせの改良、さらには平面膜のみならず、液滴接触法を用いて実験系の改良を試みる。これによってペプチドの通過信号を得ることができたら、複数種類のペプチドの通過データをいくつかの印加電圧で取得し、それらに対して機械学習による解析を行う。その後、複数種類のペプチドを分類することを通過電流データのみで行うことを目標とする。さらには、リボソーム分子とSecYEGとの融合を試み、合成過程と新生ペプチドの通過過程の同時測定を試みる。このために、シグナル配列の検討、温度条件検討、及びイオン強度条件検討が必須となる。
3: やや遅れている
当初の計画では、2年次においてペプチドの計測データを出している予定であったが、不安定な脂質膜構築やチャネル挿入効率の低さに苦慮している現状がある。しかし、温度条件の検討はできたが、これらは追加の条件検討や無細胞合成系の導入、さらには液滴接触法の導入などにより改善可能であると考えられるため、進捗状況はやや遅れているとした。
不安定な脂質膜構築やチャネル挿入効率の低さを改良するために、追加の脂質混合条件検討や無細胞合成系の導入、さらには液滴接触法の導入などを検討している。さらにはSecAによるペプチド通過だけでなく、リボソーム分子との融合によるペプチド通過についても検討する。
コロナウイルス感染症による研究活動の低迷によって当該年度の支出額に対して当初予想していた額を下回ったため。次年度への繰越金については脂質膜再構成条件検討に対して追加支出予定である。
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