本研究では、いまだに実現していないペプチド分子の網羅的解析技術の開発のためのリボソーム融合型ナノポアによるタンパク質の網羅解析基盤技術開発を目標としました。この開発の実現によって生体内におけるペプチド分子の1分子レベルにおける同定のみならず、あらゆるタンパク質やその断片、さらにはタンパク質変異体のアミノ酸配列情報取得が実現し、あらゆる疾患対象(精神疾患、不妊、糖尿病、アルツハイマー、アレルギー、等)の個別疾患を診断する医療機器への展開が期待されます。 本研究の全期間において、まずナノポア測定に利用可能な膜チャネルタンパク質のうち、トランスロコンであるSecYEGと分子モーターであるSecA複合体の選定を行い、人工脂質二重膜上での再構成を実現しました。その結果、膜挿入電流シグナルを検出し、さらに基質であるペプチド分子とATP存在下においてのみ、特徴的なナノポア電流波形を検出することに成功しました。現在では繰り返しアミノ酸配列を含む人工ペプチドに対する電流波形変化の検出を試みています。例えば特定の2つのアミノ酸の繰り返し配列やシグナル配列を用いた実験を試みています。 一方で課題は膜挿入効率の低さであり、これによって生じるシグナル検出頻度の低さにあります。これを克服するために、現在ではハイスループット超並列測定の実現及び、SecYEGタンパク質への変異導入を試みており、その結果、取得データ量の大幅な向上が見込まれ、解析による配列同定精度向上が期待できます。
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