研究課題/領域番号 |
21K18233
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 敬行 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90567760)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | リボソーム / 翻訳合成 / ペプチド医薬 / アミノキシ酸 / ヒドラジノ酸 / ペプチドミメティック / tRNA |
研究実績の概要 |
ペプチド医薬品の実用化の促進に向けて、ペプチダーゼ耐性の低さや膜透過性の低さといった課題を克服する必要がある。そのためには、天然のアミド結合以外の結合様式により連結されたペプチドミメティック主鎖骨格の導入により機能を改善することが有効である。そこで、本研究ではリボソーム翻訳によりアミド結合以外の主鎖骨格を持つペプチドミメティック化合物群の合成を目指す。 リボソーム翻訳でペプチドミメティック化合物を合成する利点は、鋳型となるmRNAの配列を変えるだけで多様な配列のペプチドミメティック化合物を合成できることにある。mRNAの配列をランダマイズすれば、ランダムペプチドミメティック・ライブラリの構築も迅速かつ容易に可能である。このライブラリをmRNAディスプレイ法と組み合わせることで、標的となるタンパク質等に特異的に結合し阻害するペプチドミメティック群を容易にスクリーニングでき、新規ペプチドミメティック医薬品へと展開できる。 本年度は、3種類のα-ヒドラジノ酸および6種類のα-アミノキシ酸を3'末端にチャージした人工tRNA(Pro1E2)を用いて、ヒドラジノアミド結合およびオキシアミド結合を連続で導入することを実現した。Pro1E2はDアーム部分にEF-P認識配列を導入した人工tRNAであり、翻訳系にEF-Pを加えることでヒドラジノアミド結合およびオキシアミド結合の形成を促進できることを明らかにした。これにより、D-ヒドラジノプロリンのペプチド鎖中への10連続での導入、α-アミノキシ酢酸の7連続での導入に成功した。本手法によって合成されたα-ヒドラジノ酸およびα-アミノキシ酸を含むペプチドミメティック群は、今後新規ペプチド医薬品開発のプラットフォームとして期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、まず1ー2年目に様々な非アミド結合性ペプチドミメティック骨格の翻訳合成を実現することを目指している。そして、結合形成が実現した基質については、2年目以降にランダムペプチドミメティック・ライブラリへの導入を行い、mRNAディスプレイ法により薬理活性ペプチドミメティック化合物のスクリーニングを行う予定である。 初年度である2021年度においては、既に3種類のα-ヒドラジノ酸および6種類のα-アミノキシ酸を用いて、ヒドラジノアミド結合およびオキシアミド結合を連続で導入することに成功しているほか、それ以外の結合様式への適用の可否についても既に評価を開始している状況である。従って、当初の計画通り順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、これまでに3種類のα-ヒドラジノ酸および6種類のα-アミノキシ酸を用いて、ヒドラジノアミド結合およびオキシアミド結合を連続で導入できることを明らかにしている。α-ヒドラジノ酸およびα-アミノキシ酸を含むペプチドミメティック群は、新規ペプチド医薬品開発のプラットフォームとして期待できるため、今後はこれらの基質を含むランダムペプチドミメティックライブラリを構築し、mRNAディスプレイ法による薬理活性ペプチドミメティック群のスクリーニングを実施する。第1段階のスクリーニングでは、血栓症治療薬の標的となるFXIIaなどをモデル標的として使用する。得られたペプチドミメティック化合物については、有機化学的に大スケール合成し結合活性・阻害活性・ペプチダーゼ耐性・細胞膜透過性等の評価を実施する。 また、α-ヒドラジノ酸およびα-アミノキシ酸以外の基質を導入した非アミド結合性主鎖骨格の導入についても引き続き並行して検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスによるパンデミックおよびウクライナ情勢の悪化に伴う世界的な供給不足と物流の停滞により、海外発注していた物品の納期の大幅な遅れが生じており、年度内に納品されない事態が生じたため。
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